今夜、あなたを襲います 高嶺の花令嬢が既成事実を狙ったその顛末
 ビクトリアは、覚悟を決める。

「クラウス様! 覚悟なさって!」

 どんっと、渾身の力を込めてクラウスにタックルした。

「なっ……」

 さすがのクラウスも予想していなかったのだろう。彼は深いブルーの目を大きく見開く。
 咄嗟にビクトリアを受け止めるが、体勢を崩してそのまま背中かからベッドに倒れた。

 ビクトリアはそのチャンスを逃さず、クラウスの腹の上に跨ると彼の顔の両側に手をついた。可憐に見えるビクトリアだが、軍人である父に似てなかなか運動神経はいいのだ。
 クラウスが、まっすぐにビクトリアを見上げる。

「…………」

(ど、どうしましょう。クラウス様がこんなに近くに!)

 想像以上に近い。ものすごく近い。
 大好きな人の顔が、目の前にある。

(ふわあぁぁ! カッコいい!)

 長い睫毛。
 形のいい鼻梁。
 いつも引き結ばれている唇。
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