今夜、あなたを襲います 高嶺の花令嬢が既成事実を狙ったその顛末

 ビクトリアの顔が一気に熱くなる。どくんどくんと心臓がうるさく鳴った。

(わわわ、神々しすぎて直視できないわ。……このあとどうするの⁉)

 ビクトリアは、れっきとした貴族令嬢。それも、侯爵令嬢だ。
 男女の睦事については、『ベッドに入ったら旦那様に従うこと』としか聞いていない。つまり、この後のことを何もしらなかった。

 しかし、クラウスは何をするでもなく、黙ってビクトリアを見上げている。
 じり、じりと頬に熱が集まる。

(どういうことなの⁉ ベッドに押し倒せばどうにかなるんじゃなかったの⁉)

 おかしい。社交界で聞いた話と違う。

「……フォスター侯爵令嬢」
「は、はい」
「何をしていらっしゃるのですか」
「き、既成事実を……」
「はい?」
「既成事実を作りたいと思います!」

 ビクトリアは大きな声で叫ぶ。
 そう。ビクトリアはなんとしても既成事実を作りたいのだ。クラウスの心を動かすのは、それ以外に方法が思いつかない。

「バカなことを言っていないで、はやくそこをどいてください。二度とこんな真似はしてはいけません」

 クラウスの眉間に深い皺が寄る。
 好きになってもらうどころか、低い声で叱られた。
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