今夜、あなたを襲います 高嶺の花令嬢が既成事実を狙ったその顛末
  ◇ ◇ ◇


 それから二週間。
 ビクトリアは失恋の痛みに耐えるために家に引きこもった。

 結局あの日はビクトリアが泣きながら部屋にこもった直後に父が帰ってきて、クラウスは彼としばらく話し込んでから帰っていった。
 その後、父親からは「話がある」と言われたが、気分が悪いと言って会わなかった。その後も何度か話を振られたが、のらりくらりと断った。

 だが、そんなその場しのぎがいつまでも通用するはずもない。

「ベッキー。フラウト卿のことだが、今も気持ちは変わらないか?」

 朝食時に前触れなく話を振られ、ビクトリアはびくっとする。
 父もビクトリアがクラウスにご執心だったことは知っているのだ。

「嫌ですわ、お父様。私ももうすぐ二十歳ですから、いつまでも初恋に憧れたままの子供ではありません」

 ビクトリアは胸の痛みをごまかしつつ、おほほと笑う。

「しかしだな──」
「お父様! 私、もうクラウス様のことは終わりにしましたの。それに、結婚相手はちゃんと自分で探します。だから心配しないでくださいませ!」

 とにかく話を終わらせたくて、ビクトリアは矢継ぎ早にそう言った。いつもと違う剣幕に、父親は呆気にとられたようにビクトリアを見つめる。
 ビクトリアは、若干の居心地の悪さを感じた。

「えっと……だから、その……クラウス様のことはもうなんとも思っていません。それよりも、私は久しぶりに社交界にでも行こうと思います。新しい恋を探そうと思いまして」

 なんとかその場を逃れたかったビクトリアは、声高々にそう言ったのだった。



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