WINNER
ぅわあ!!やって、しまったぁ!!
でも、こうなったら真っ向対決してやろうじゃないの。
私は逃げることは早々に諦め、パンツスーツの美人を置き去りにこちらに近づいてくる九条をじっと睨め付けた。
九条は後ろめたさなんてどこへやら、相変わらず飄々とした笑顔を浮かべていた。
何故だかそれだけで負けてしまいそうになる。
「何、そっちは”デート”?」とたっぷり嫌味を含めて先制攻撃をしかけてきたのは九条。
「”そっち”もね。いいご身分ね、私がこんな目に合ってるってときに、しかもあんたが原因でね」ふん、と言ってやると
「こんな目?何かあったの?」と何も知らないであろう陸ちゃんがあたふたと言い、私たちはそれを無視。(後から考えるとふつーに酷いわね)
「あー、”アレ”は」とちらりとカウンターに座ったままの女性の方を振り返り、名も知らない彼女は何故だか申し訳なさそうに苦笑い。
「何か誤解してるみたいだけど?俺はデートじゃないし」
「じゃぁ何?営業、とでも言いたいの?」
「違うって。てか”そっち”こそデートなんじゃないの?悪かったな、邪魔して」九条はいつになく不機嫌そうに顔を歪め、頭の後ろを掻き
「あれだけ宣戦布告しておいて仁科に近づくとは、いい度胸だな」と静かに言って陸ちゃんの方を睨みつける。
何が何だか分からない陸ちゃんはあたふたと「は、陽妃ちゃん、良く分からないけど、お、落ち着いて」と私を宥めようと必死。
良く分からないだぁ!?あなた、九条に威嚇されてるのよ!
イラぁ……
ああ、ダメ……イライラが爆発しそう。
「おい、おっさん。仁科 陽妃は俺のもんだって言ったの、忘れたんか?」
俺の―――”もの”?
ブチっ!
とうとう私の堪忍袋の緒が切れた。
「だ・れ・が!あんたの”もの”だ。私は誰の物でもない!
一回寝たぐらいで彼氏面してんじゃねぇ!!」
私はここがどこだか憚らず、九条の胸倉を両手でつかみ上げると、襟が詰まった九条は苦しそうに顔を歪めた。
「え…!寝っ……!」陸ちゃんは聞いてはいけないものを聞いてしまったかのように口を覆っていたし
「く……苦し…」と九条が顔を赤くさせて私の手に自分の手を重ねる。
「は、陽妃ちゃん!」と陸ちゃんが慌てて立ち上がり、私はパっとその手を離し、九条がその反動でよろけついでに言うと床で革靴が滑ったのだろう、みっともなく後ろにひっくり返った。
尻もちをついた九条を冷たく見下ろし
「女だったら誰でも言うなりなんて調子こいてんじゃねーよ」
そう吐き捨てると
「は、陽妃ちゃん……と、とにかく落ち着こう…」と陸ちゃんがあたふた。
気づいたら、店内に居るウェイターも含め客たち全員がこっちを見ていた。
は……
やって、しまったーーーー!!!