WINNER
「アナタ、いつ私の彼氏になったンですか?」目を吊り上げると九条は「それはこないだセック……もがっ!」それ以上言うな!私は空いてる方の手で九条の口を塞いだ。
電車に揺られて10分と言う距離。
さっきから女性の乗車客の視線がイタイんですけど……
一緒に歩くことはあってもちょっとの距離だし、普段はこいつ車だし、何で交通機関なんて。タクシーで帰ればいいじゃん。カネ持ってンだし。何ケチってンだよ。
ブツブツ言ってると
「俺って彼女を自慢したいタイプ~」へらっと九条が笑う。
自慢どころか女性客の視線の、羨望とも嫉妬ともとれる視線に刺殺されそうなんだけど。
やっと電車から降りても九条は手を離そうとしない。
「いつまでするつもり?”恋人ごっこ”」
「だから、”ごっこ”じゃねーって」
「じゃぁさっきの美人は誰よ、アヤメさんとか言って、随分親し気じゃない」
「あー、アレは従兄弟の同僚」
「はー、都合の良い立場で。じゃあ今度一緒に歩く女は鳩子のツレか?」
嫌味たっぷりに言い返してやると
「ホントだって」と九条は意外にも真剣そのもの。
一瞬信じそうになったけど、でも、完全に浮気を発見された間抜けな男の言い訳そのものじゃない。そんな嘘通用すると思うな。
てか付き合ってもないから浮気でもないか。
私のマンションまで徒歩で10分と言うところ、だんだんと街灯が少なくなって暗くなっていく。住宅街だから家の明かりとかは点在しているけれど、それでも怖いものは怖い。夜も8時を過ぎると人通りが急に少なくなるし。最近はなるべく定時に終わらせてすぐ帰るようにしてたからそれなりに人の往来もあったけれど。
だってあんな脅迫状送り付けられたんだよ?流れが流れだったけれど、九条が一緒で良かったのかもしれない。
「ねぇ九条、あの脅迫状さ……」
言いかけたときだった。
電柱の影から華奢な影がのっそりと出てきて九条の方が先に足を止めた。私にも止まるよう、手を引かれる。
「仁科、下げれ」
え――――?
「久しぶり
仁科さん」
斎藤―――さん?