WINNER
斎藤さんは首を項垂れ、「ほら、行くわよ」とアヤメさんの言葉に促され大人しくパトカーに連れていかれようとしていたが、またもくるりと振り返り
まだ何か?と私は一瞬身構えたが
「仁科さん―――、私、誰かにそう言ってもらいたかった。どうしてもっと早く仁科さんと出会えなかったのかな。
私、あなたと、友達になりたかった」
斎藤さんの充血した目から涙がポロリと落ち、細い顎を伝った。それはいつも見る冴えないおばさん、ではなくとてもきれいで儚いものだった。
項垂れながらも大人しくアヤメさんに連れていかれる斎藤さんの華奢な背に
「なれるよ!」私は大声を発した。
またも斎藤さんがゆるりと首を上げ、涙でぐしゃぐしゃになった顔をこちらに向ける。
「なれるよ、友達に―――今からでも」
「ありがとう」
誰かに『ありがとう』と言われる人生じゃなかった。感謝はしてきても心から感謝されたことなんてあるのかな。だけど斎藤さんの言葉はホンモノのように感じた。
願わくば、斎藤さんの未来にも誰かに感謝をされる明るい道が待ってますように。
なんてセンチになりながらも
「え!三日間私を尾行!?」
その後署に連れていかれた私と九条とその場にいた陸ちゃんは一応の聞き取り調査と言うものを受けていて、ここ三日アヤメさんなる刑事さんが私を尾行してきたことを聞かされびっくりした。全然気づかなかったよ。
そこで斎藤さんが、やはり私の後を尾行していたことに気づいた。斎藤さんはすでに横領犯として指名手配中だったけれど、彼らは敢えて斎藤さんを泳がせ様子を見ることにしたらしい。
そのことを説明してくれたのは、アヤメさんとペア(?)になっているであろう、さっきの現場で斎藤さんからナイフを奪い拘束してくれた男の人で。
てか……さっきは気づかなかったけどこの人もめちゃめちゃイケメンなんですけど。
「で、”こっち”が俺の従兄弟」と九条が改めてその男の刑事さんを紹介してくれて両肩に手を置き、てか従兄弟も美形って……どうなってる美伝子…「俺が仁科を護衛するようお願いしたの。脅迫状を送った犯人は必ず犯行をエスカレートさせる筈だから」とにこにこ。
九条……『手は打った』って言ってたけど、だったらちゃんと最初から説明しておいてよ!
じゃなきゃ私、アヤメさんに余計な嫉妬心妬かないで済んだじゃない!
……ん?
嫉妬??
私って、やっぱ九条のことが
好き、なんだ。