WINNER

そしてその日も午後を平和に……と言いたかったが午後に外回りのアポが三件、そして上司から押し付けられた書類の山を青山くんとやっつけながら、帰宅時間は22時を過ぎていた。


他の薄情な営業員たちは先に帰ってしまって、少しだけ点けた侘しい蛍光灯の下、ようやく仕事を片付け終えた私は軽く伸び。


青山くんが


「お疲れ様です、やっと終わりましたね」と、全然疲れを見せてない笑顔で栄養ドリンクを手渡してきて


「うーん、ドリンクありがと。ほんっと今日に限って何でだろうね」私は栄養ドリンクのキャップを捻った。


「今日予定とかあったんですか?」と聞かれ


「ううん、何もないよ?」


と言った後になって、もしかして青山くんこの流れで私をまた誘おうとしている?と身構え


「今日は……」何と言い訳しようかな、とあれこれ考えているときだった。


白いふわふわのコートを羽織った宝田ちゃんが営業課に姿を現し、


「先輩~、お迎え、来てますよぉ」とどこか楽しそうにぶんぶん手を振っていた。同じように敦美も「早く、早く!」と手招きしていた。デザイナーの敦美がこの時間まで残ってるのは別に不思議じゃないけど、宝田ちゃん?総務部はほとんどの社員が定時ピッタリに帰る筈なのに何で居るの?


それに、迎え?


「て、誰?」きょとんとしていると


「ほら、早く支度してぇ」と宝田ちゃんが私のバッグとコートを手に取り、敦美が「急いで」と私の手を取る。


「え?え!」と言っているうちにあっという間に(勝手に)帰り支度を終わらされ部署を出る真際、ちらりと見えた。


青山くんと宝田ちゃんが小さくウィンクし合ってるとこを。


な、何?


エレベーターに押し込まれ、って言うかこれってほぼ連行??敦美と宝田ちゃんにがっしりと両腕をホールドされ……てか宝田ちゃん意外に力強いのね。てか怖い……私どこに連れていかれるの!


「早く早く」と急かす宝田ちゃんに訳も分からずついていくしかできない私は、ロビーに到着したとき思わず目を開いた。



ロビーに、幅は狭いものの、


レッドカーペット!?


そしてその敷かれたレッドカーペットの手前で、これまたいつもにも増してキマッたスーツ……じゃなくてタキシードぉ!!?姿の九条が恭しくお辞儀をして





「お迎えにあがりました。俺の姫」




ひ、姫!!?



< 75 / 82 >

この作品をシェア

pagetop