WINNER

この会社は働き方改革を重んじているのか定時になると帰る社員が割と多く、その社員たちは帰宅した後なのか、ロビーは私たち以外居なかったのが幸いだ。


「……てか、これってドッキリ?」テレビ局でも来てるのか?とあちこちを見渡したけれどそんな姿は見当たらない。


そもそも一般人の私をドッキリに仕掛けてどーする。ってツッコミはいい。


敦美と宝田ちゃんにはにやにやしながら私から手を離すと、私の背を押した。


今日に限ってやたらと多かった仕事の量。青山くんが手伝ってくれたから何とか今日中に終わったけれど、もしかして青山くんもグル!?


ズイと押し出され、私はあっけなく九条の胸の中。


九条のいつも纏っている爽やかな香水が鼻孔を甘くくすぐる。


「な、何で……」と間抜けな顔をしていたに違いない、九条に問いかけるも、九条はそれはそれは自然に私の手を取りレッドカーペットを歩き出す。その後ろを敦美と宝田ちゃんがついてきた。


な、何これ!は、恥ずかしい!!


この時間帯で良かった。てかこの時間帯しかできないよね、こんなこと。


九条はゆっくりとした足取りでレッドカーペットを歩き、にこりと優しく微笑んで私を見る。


それはいつも見せるどこか含みのある笑みなんかじゃなく、殆ど見ることがない優しい―――微笑。


歳柄にもなくこの先に何が待っているのか、ワクワク…と言うかドキドキ緊張しながら歩くとレッドカーペットが途切れた先、広い玄関口に九条のいつもの黒い高級外車が停まっていた。


九条は助手席を開けると、私を中に促し、何も言わない九条が何を企んでるのかちょっと怖くなってきたところだけど


「ささ、姫たちもどーぞ」と後部座席に敦美と宝田ちゃんが入り込んだのを見てちょっとほっ。


「青山くんは?」と敦美が走り出した車の背後を気にしながら言い出し


「レッドカーペットを片付けてから後から来るって言ってましたぁ」と宝田ちゃんがにこにこ。


青山くん?後から来る??


どゆこと!?


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