尊い推しに溺愛されてます!?
 その日のホームルームで、私はさらに固まることになる。

「白石、今日から転校してきた一条の隣、空いてるだろ。そこ使ってくれ」

 先生の言葉に、教室中がざわついた。

 え。
 待って。
 隣?

「よろしく、みう」

「よろしくお願いします……」

 終わった。
 学校生活がいろんな意味で終わった。

 授業中も休み時間も、隣に推しがいる。
 ノートを取る横顔がきれいすぎて無理。
 消しゴムを落としただけで拾ってくれるし、教科書を見せてくれるし、距離感がおかしい。

「みう、ここ間違ってる」

「えっ」

「ほら。この公式」

「あ、ほんとだ……ありがとうございます」

「敬語いらないよ」

「で、でも……」

「じゃあ、慣れるまで少しずつね」

 そう言って優しく笑うから、私はもうまともに顔を見られなかった。

 しかもレンくんは、なぜか私にだけやたら近い。

 昼休み。
 私は屋上前の階段で、こっそり推し補給をするためにスマホの待ち受けを眺めていた。

 もちろん壁紙はレンくん。
 去年のライブの、伝説の横顔ショット。

「へえ」

 頭の上から声が降ってきた。

「そんなに俺のこと好きなんだ?」

「っっ!?」

 反射的にスマホを隠したけれど遅かった。
 見られた。完全に見られた。

「ち、違っ……これは、その……」

「俺だよね、これ」

「…………はい」

「ファン?」

「……はい」

「いつから?」

「中一からです……」

 顔を真っ赤にしてうつむく私の前に、レンくんはしゃがみこんだ。

「そっか。そんな前から」

 その声が、思ったよりずっとやわらかくて。
 からかわれると思っていた私は、そっと顔を上げた。

 するとレンくんは、少しだけ困ったように笑った。

「うれしい」

「え?」

「ずっと応援してくれてたんでしょ」

「そ、それは……はい」

「じゃあ、今度は俺がみうを大事にする番かな」

 意味がわからなかった。

「……え?」

「だって、みう可愛いし」

「か、可愛くないです!」

「顔真っ赤にしてるの、可愛い」

「やめてください……!」

 推しの破壊力、危険すぎる。
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