結婚秒読みのアラサー女子、助けたカメに告られる。
「もしかして、兄は知ってたの。カメちゃんの気持ちを……」
「はい」とリアムが答えた。
「みっちゃんだけでなくメグさんも他のメンバーも、みんな僕がナギサを好きなことを知っていました」
「ええぇっ!!」
 ふたたび衝撃の事実を聞かされて、私は絶叫した。
「うそでしょう! だって、誰もそんなこと教えてくれなかったよ!」
 今も当時の古参メンバーとは、他のゲームで顔を合わせる。メールやチャットもしている。私がカメ吉くんと疎遠になったことも知っている。けど、誰もその理由については教えてくれなかった。
「ゲンさんやヤギさんとは今もチャットする仲ですが、彼らもあえて秘密にしてくれたんです。僕が直接告白するべきだと言って……」
 ゲンさんもヤギさんもエタエルの古参メンバーだ。彼らもいい大人だから、過度なお節介は不要と判断したんだろう。でも、だからって……。
「じゃあなんで、離れる前に言ってくれなかったの……。私のことを好きだったって……」
 ショックのあまりテーブルに突っ伏して、私はボヤいた。
「それは……」
 リアムは言い淀み、「振られるのが、怖かったんです」と言った。
「僕は当時十七歳で、子どもでした。ナギサが僕のことを弟のように思ってくれていることはわかっていました。弟に愛の告白をされても、姉は困るだけでしょう?」
「それは……」
(……たしかに)
 当時の彼に好きだと言われても、私はまともに相手をしなかっただろう。付き合う付き合わない以前の話だ。
「だから、何も言わずに離れたの?」
「……はい。あの時の僕には、そうするしか選択肢がなかったんです」
「…………」
「ただ、そうするしかないとわかっていても、この五年は寂しかったです。何度、あなたに連絡しようと思ったか……」
「…………」
 リアムが話す声を、私は黙って聞いていた。昔たくさん聞いた、線の細い柔らかなバリトン。男性的なのに優しくて、オスっぽいのにいやらしくない。……私の好み、どんぴしゃな声を。
「忘れるべきだと思いました。しょせん叶わぬ恋だと。けれど、どこにいても何をしていても、ナギサのことを忘れるなんてできなかった。あなたからもらったメールを見返しては未練たらしく泣くばかりで、……どうして自分は日本人じゃないんだろう。どうしてナギサより年下なんだろう。どうして、どうして、と願ってもしかたのない、無意味な願望ばかり湧いてきて……」
「…………」
 表情は見えなくても、声だけでわかった。彼が話していることは、全部本当なんだって。
「……そんな時に叔父からメールが来て。みっちゃんが僕と話したがっていると。久しぶりにチャットで会ったみっちゃんは、変わらず気さくで穏やかな人でした。その時に彼が今、薬剤師として働いていることも、ナギサが元気でいることも聞きました」
「…………」
 話す声のトーンは変わらない。
 淡々と彼が紡ぐ音が気持ち良くて、私は抱えた膝の上に顎を乗せて、その心地良い音色に耳を傾けた。
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