結婚秒読みのアラサー女子、助けたカメに告られる。

2.その顔と声はズルい。

 息が止まった。
 私は低い声で、「本気で言ってるの……?」と訊いた。
「はい。本気です」
 リアムの表情は真剣だった。
 もしやと思っていた展開ではあるけれど、頭の隅では「まさか、ありえない」という思いがあった。
「だって、でも……。もしかして五年前から、なの……?」
「はい。ずっと前から、あなたのことが好きでした」
〝あなたのことが好きでした〟
 こんなストレートな愛の告白を受けたのは何年ぶりだろう、と私は思った。もしかしなくても、人生で初めてかもしれない。
「この五年、ナギサのことを忘れた日は一日たりともありません」
 へたな日本人よりも綺麗な日本語で、リアムは私への想いを言葉にした。
「あなたに恋人ができたと聞いて、心が引き裂かれたような思いでいました。辛くて悲しくて、友人を続けることすら堪えられなくなり、一方的に距離を置きました。……本当にごめんなさい」
「……どうして」
 五年も経って明かされた真相に、私は呆然としながら問うた。
「どうしてもっと早く、言ってくれなかったの。私、すごく悩んだのよ。自分が何かしたんじゃないかって、自分の振る舞いを何度も振り返って、失言したんじゃないかって、傷つけたんじゃないかって……」
 五年前。何度も何度も読み返したカメちゃんとのやり取り。彼とのチャット、メール、通話。

 ―― 僕にとって、ナギサは救いの女神です。本当です。最近は学校でも親しい友人が増えたんですよ。あなたに会えなかったら、今の僕はなかった。
 ―― もっと勉強も社交も頑張って、あなたにふさわしい男になりたい。

 ―― えっ……恋人ができた? ……そうですか。おめでとうございます。

 ―― ナギサ。もう連絡を取り合うのはやめましょう。
 ―― いきなりに思うかもしれませんが、僕が限界なんです。いいえ、ナギサは何も悪くありません。僕のワガママです。
 ―― 本当にごめんなさい。でも、もう無理なんです。……これまでありがとうございました。どうぞお幸せに。

 これが最後の会話だった。
 それきりカメちゃんとは本当に連絡が取れなくなった。メールも電話も着信拒否されて、彼はエタエルからも姿を消した。
 唯一の繋がりである兄も、この件に関しては非協力的だった。悲嘆に暮れる私に対し、「彼がお前から離れたのには彼なりの理由があるんだ。しかたないだろう」と、妹の私でなくカメちゃんに同情的だった。
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