結婚秒読みのアラサー女子、助けたカメに告られる。
「……すみません」
 謝ってばかりの美青年は、心底申し訳なさそうにうなだれた。
「お伝えしておくべきでしたが、なかなか言い出せなくて……」
「はぁ……」
「それで、初めてナギサの写真を見た時に、とても綺麗な人だなって思って……。実際に言葉を交わしたら、中身も気さくで優しい素敵な女性で、……あの、完全に好きになりました」
「そ、そっかぁ~~~……」
 自慢じゃないけれど、私はこれまでそれなりにモテてきた。女らしさとはかけ離れた性格でオタクだけど、こんな女でも一定の需要はある。……でもただモテただけで、誰かに熱烈に愛された記憶はない。ついでに、こんなに綺麗な顔をした男性から愛の告白を受けた経験もない。
 カメ吉くんの性格は知っている。真面目で控えめで謙虚で、頭が良くて思いやりがある。だから私は彼が好きだった。文化も民族も住む国も違うけれど、彼とは人として通じ合えていると思っていた。
(……だけどそれは、私の独り善がりだった。彼は私を女性として好いてくれていたのに、私は全然気づかなくて、知らず知らず彼を傷つけて……)
「ごめんね」
 自然と謝罪の言葉が出た。
「なぜナギサが謝るんですか?」
「だって……、私、すごく無神経だったよね。彼氏とのノロケとかも話してたでしょう? 嫌だったよね。……ごめんね」
 これは本心だ。自分は被害者の立場だと思っていたけれど、じつは加害者だったと知った。謝って済む話ではないけれど、私には謝ることしかできない。
「それはナギサのせいではありません。僕が本心を伝えていれば、あなただって彼氏の話なんかしなかったでしょう?」
「それは、たしかにしないけど……。そもそもカメちゃんが私を好きだってわかっていたら、他の男と付き合ったりしなかった……」
「え?」
「え!?」
 自分で自分の発言に驚いて、私は驚いた顔のリアムと見つめ合った。
「今、私、なんて言った!?」
「えっ、それは、ええと……。ちょっと自信がないんですが……、僕から告白されていたら、他の男とは付き合わなかったって……、そう聞こえました……」
「だよね!? 私、今、そう言ったよね!?」
「はい……」
「うわぁ、マジかーーー……」
(いつも本音が勝手に口から出る性格だけど、まさかここまで制御不能だったとは……)
 カップをテーブルに置いて、私は「もしかすると私も、カメちゃんのことが好きだったのかもしれない……」とつぶやいた。
「それは本当ですか!?」
「たぶん……」
 あまりに鈍感がすぎる私は、当時の自分の本心さえ判然としない。でも、もしそうなら納得だ。歴代の彼氏たちとは別れてもノーダメージだったのに、カメちゃんとの別れはメチャクチャ辛くて悲しかった。それも、私が彼を友人以上に想っていたからじゃないだろうか。
 だけど日本とイギリスという距離や、年齢差や、国籍の違い。いろんな条件が「彼とは無理だ」という現実を否応に突きつけてくるから、可能性を考える前に諦めた。それこそ恋心を自覚するより前に、理性が「ないない、絶対ない」と感情に蓋をした。
「って今考えた仮説なんだけど……」
「自分のことなのに、ずいぶんと曖昧なんですね」
「だって、自分がカメちゃんを好きだったかもって、さっき自覚したばかりだもん」
 急に照れが込み上げて、私は赤い顔でそっぽを向いた。
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