結婚秒読みのアラサー女子、助けたカメに告られる。
「でも、やっぱり無理だよ……」
期待に満ちた視線を横顔に受けながら私は、「そろそろ秋物に替えないと」と思っている夏用ラグの模様を見つめた。
「いくらお互い好き合ってても、あなたはイギリスに住んでいて、私は日本で」
彼の近況は聞いた。今リアムはロンドンの大学院に在籍していて、これから博士課程に進むのだとか。実家が病院を経営しておりご両親もお医者さんと聞いていたから、てっきり彼もそちらの道に進むと思っていたけれど、病院は年の離れた姉夫婦が継ぐ予定だという。
どちらにしろ、彼がロンドンを離れる選択肢はない。私も日本を出る予定はない。
(やっぱり無理ゲーだよ、この恋は……)
そう結論づけて、私は「はぁ」と嘆息した。
でもリアムのほうは違ったみたいだ。
「ナギサ、答えてください。さっきの言葉は本心ですか? あなたも僕のことを好きだったというのは、本当ですか?」
「……たぶん、本当」
「たぶんとは、確信がないんですか?」
「……あるけど、断定したくない」
昔の感覚に戻って、私はカメちゃんに話すようにリアムと話した。
「なぜ断定したくないのですか」
急に声のボリュームが上がり、前を向くと綺麗な顔がさっきよりずっと近くにあった。
「な、なんで近づいてるの……」
私はたじろぎながら、ラグに下ろしたお尻をじりっと後退させた。
「ナギサにもっと近づきたくて」
「ち、近すぎない?」
テーブルを回り込んできた相手に、私は座ったまま距離を取ろうとした。けれど私が後退すると同時にリアムのほうは前進してくるので、私たちの距離は広がるどころか縮まる一方だった。
ついに背中がベッドの枠に当たり、私は逃げ場を失った。陽光を受けた紅葉樹のように煌めく瞳が、熱を帯びて私を見つめる。
「……ナギサ」
白く長い指が私の手を掴む。私は右の頬に相手の視線を感じながら、目線だけ左に逃がした。
「あらためて言わせてください。どうか僕と、お付き合いしていただけませんか。あなたのことが心から好きなんです」
「…………」
「本気です。実際に会ったのは今日が初めてだけど、実物のあなたは僕が思い描いていたとおりの人でした。あなたは五年前と何も変わっていない。綺麗で可愛くて素直で、一緒にいるだけで心が満たされる。そういう素晴らしい人です。ナギサ、どうか僕の恋人になってください」
「う……」
「ナギサ。こっちを見て」
しかたなく、私は視線を正面に戻した。理想を具現化した顔が、熱っぽい表情で私を見ている。自分でも自然と顔が赤らむのがわかった。
(……ってか。その顔でその告白は、あまりに卑怯じゃないか!?)
期待に満ちた視線を横顔に受けながら私は、「そろそろ秋物に替えないと」と思っている夏用ラグの模様を見つめた。
「いくらお互い好き合ってても、あなたはイギリスに住んでいて、私は日本で」
彼の近況は聞いた。今リアムはロンドンの大学院に在籍していて、これから博士課程に進むのだとか。実家が病院を経営しておりご両親もお医者さんと聞いていたから、てっきり彼もそちらの道に進むと思っていたけれど、病院は年の離れた姉夫婦が継ぐ予定だという。
どちらにしろ、彼がロンドンを離れる選択肢はない。私も日本を出る予定はない。
(やっぱり無理ゲーだよ、この恋は……)
そう結論づけて、私は「はぁ」と嘆息した。
でもリアムのほうは違ったみたいだ。
「ナギサ、答えてください。さっきの言葉は本心ですか? あなたも僕のことを好きだったというのは、本当ですか?」
「……たぶん、本当」
「たぶんとは、確信がないんですか?」
「……あるけど、断定したくない」
昔の感覚に戻って、私はカメちゃんに話すようにリアムと話した。
「なぜ断定したくないのですか」
急に声のボリュームが上がり、前を向くと綺麗な顔がさっきよりずっと近くにあった。
「な、なんで近づいてるの……」
私はたじろぎながら、ラグに下ろしたお尻をじりっと後退させた。
「ナギサにもっと近づきたくて」
「ち、近すぎない?」
テーブルを回り込んできた相手に、私は座ったまま距離を取ろうとした。けれど私が後退すると同時にリアムのほうは前進してくるので、私たちの距離は広がるどころか縮まる一方だった。
ついに背中がベッドの枠に当たり、私は逃げ場を失った。陽光を受けた紅葉樹のように煌めく瞳が、熱を帯びて私を見つめる。
「……ナギサ」
白く長い指が私の手を掴む。私は右の頬に相手の視線を感じながら、目線だけ左に逃がした。
「あらためて言わせてください。どうか僕と、お付き合いしていただけませんか。あなたのことが心から好きなんです」
「…………」
「本気です。実際に会ったのは今日が初めてだけど、実物のあなたは僕が思い描いていたとおりの人でした。あなたは五年前と何も変わっていない。綺麗で可愛くて素直で、一緒にいるだけで心が満たされる。そういう素晴らしい人です。ナギサ、どうか僕の恋人になってください」
「う……」
「ナギサ。こっちを見て」
しかたなく、私は視線を正面に戻した。理想を具現化した顔が、熱っぽい表情で私を見ている。自分でも自然と顔が赤らむのがわかった。
(……ってか。その顔でその告白は、あまりに卑怯じゃないか!?)