結婚秒読みのアラサー女子、助けたカメに告られる。
「まさか日本で本物のスコーンとクロテッドクリームが食べられるなんて」と感激するリアムに、私は「今、日本ではアフタヌーンティーが流行ってるから、スコーンも人気なの」と答えた。
「アフタヌーンティーだけじゃなくて、ティディベアとか紅茶とか、あっ、シェイクスピアとかシャーロック・ホームズとか。そもそも日本人はイギリス文化を好きな人が多いんだよ」
「そうですね。日本の友人は皆さん、一度はイギリスへ行きたいと言ってくれます。大英博物館に行きたいとかバーでバンドの生演奏を楽しみたいとか、ベイカーストリートを歩きたいとか、目的は様々ですが。日本人がイギリスを愛してくれて僕も嬉しいです」
「うん、いいよねぇ、イギリス」
「日本もいいですよ。初めて来ましたが、とても過ごしやすい空気を感じます」
「ほんと? あ、前に、東京を案内するって約束したこと、覚えてる?」
「もちろんです。秋葉原へ連れていってくれるんでしょう?」
「秋葉原だけじゃなくて、原宿とか渋谷とか、行きたいところはどこでも連れてくよ」
「はい。すごく楽しみです」
 そんな和やかな会話をしていると、私のスマホがピロンと鳴いた。画面を見ると、愛美からのメッセージだった。
『起きた? カメちゃんとはどうなった?』
 あいかわらずの用件のみの文章に笑って、私はこちらも用件のみで返した。
『起きたよ。今、朝ごはん食べてる。明日、裕貴と別れる』
 これだけですべて通じたようで、『マジか!』という一言メッセージのあと、いきなり玄関チャイムが鳴った。
「まさか」とドアスコープを覗くと、予想した顔がこちらを覗くように見ていた。
「なんで来たの?」
 私がドアを開けて尋ねると、朝からヘアもメイクも完璧な幼なじみは、「だってこっちのほうが早いじゃない」と言った。
 愛美は家主の許可も得ず上がり込み、「カメ吉くん、おはよう」とリアムに挨拶した。
「おはようございます、メグさん」
 礼儀正しく挨拶を返すリアムを見て、愛美は「なーんだ、この様子だと昨日は何もなかったみたいね」とつまらなそうに口を尖らせた。
「そりゃ何もないわよ。順番は間違えたくないもの」
 キスしたことは内緒にして、私は何でもない顔で答えた。
「あんたらしいわー」
 愛美は私の座っていた場所に腰を下ろし、「私にも紅茶ちょうだい」と言った。そして私からミルクティーのカップを受け取ると、それをズズッと音を立てて啜った。
「何にしろ良かったわ」
「何が?」
「あんたがあの男と別れてくれて」
「まだ別れてないけど……」
「でも明日、別れ話をするんでしょう?」
「まぁ、もう付き合えないからね……」
 良心の呵責はあった。何しろ結婚まで考えた相手だ。これまでの男たちとは関係の重さが違う。
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