結婚秒読みのアラサー女子、助けたカメに告られる。
「……なるほど」
私は怒るよりも呆れるよりも、千里眼のような親友の慧眼に驚いていた。
(なんでうちの社員でもない、裕貴と一度会っただけの愛美が、こうなることを予想できたわけ!? もしかしてあの人、超能力でも持ってんの!?)
ブルリ、と悪寒が背中を走った。それを怒りからくる震えと解釈したらしく、「君が怒るのも当然だ」と裕貴が肩を落とした。
「俺はどこかで君に甘えていたんだ。汀は大人だから、俺に何も要求しないだろう? 俺はいつのまにか、その優しさに胡座をかいてしまったんだ……」
私はそこで、チラと腕時計の文字盤を見た。……二時二十分。
「お話は済みましたか。それでは、私はこれで失礼します」
愛美の言うとおり、ここは放置して立ち去っても良いなと判断し、私は立ち上がった。
「えっ、ちょ、本当に帰るのか!? このまま!?」
そこで裕貴も立ち上がった。
彼が立ち上がったタイミングで、私たちの斜め後ろのテーブルにいた愛美とリアムも立ち上がりかけた。
けれどそれより早く、三番目のキャストが登場した。
「景川さんっ!」
(あの子は……)
顔しか記憶にないその女の子は、フワフワと柔らかそうな明るい茶髪に桜色の唇が印象的な、とても可愛い顔立ちをしていた。
〝コジマさん〟の登場で、また空気が変わった。彼女は私の隣を通りすぎ、まっすぐ裕貴のところへ行った。そして、そのまま彼の胸に飛び込んだ。
「彼女さんと、別れてください! 私、本気で景川さんのことが好きなんです!」
「えっ、ま、マリナちゃん、どうしてここに……」
裕貴のお陰で彼女のフルネームが〝コジママリナ〟だと判明し、すっきりしたところで私は「では、あとはお二人でごゆっくり」と言い、その場を離れた。コーヒー代は元彼の奢りになるけれど、このくらいしてもらってもバチは当たらないだろう。
カフェの出口で二人と合流し、私は「あーっ、疲れた!」と思わず本音を口にした。
そしてクスクス笑う親友を見つめ、「もしかして愛美って、魔女の子孫だったりする?」と言った。
「んなわけないでしょー。初めてあの男に会ったとき、私を見る目が恋人の友人を見る目じゃなかったから、何だか気に入らなかっただけだよ」と、今頃になって彼女はネタばらしをした。
「ああいうタイプは誘惑に弱いから、突つけばいくらでも埃が出ると思ったの。でもまさか、会社の子に手を出してたとはねー」
「何にしろ、愛美の言うとおりにして正解だったよ。あと今、無性に甘い物が食べたい! 早く上に行こ!」
そう言って私は、頼れる親友と、新しい恋人の手を引いた。愛美とリアムは驚いたように顔を見合わせ、二人同時に小さく笑った。
私もいつのまにか笑顔になっていた。
自分でも不思議なくらい、心は晴れ晴れとしていた。
私は怒るよりも呆れるよりも、千里眼のような親友の慧眼に驚いていた。
(なんでうちの社員でもない、裕貴と一度会っただけの愛美が、こうなることを予想できたわけ!? もしかしてあの人、超能力でも持ってんの!?)
ブルリ、と悪寒が背中を走った。それを怒りからくる震えと解釈したらしく、「君が怒るのも当然だ」と裕貴が肩を落とした。
「俺はどこかで君に甘えていたんだ。汀は大人だから、俺に何も要求しないだろう? 俺はいつのまにか、その優しさに胡座をかいてしまったんだ……」
私はそこで、チラと腕時計の文字盤を見た。……二時二十分。
「お話は済みましたか。それでは、私はこれで失礼します」
愛美の言うとおり、ここは放置して立ち去っても良いなと判断し、私は立ち上がった。
「えっ、ちょ、本当に帰るのか!? このまま!?」
そこで裕貴も立ち上がった。
彼が立ち上がったタイミングで、私たちの斜め後ろのテーブルにいた愛美とリアムも立ち上がりかけた。
けれどそれより早く、三番目のキャストが登場した。
「景川さんっ!」
(あの子は……)
顔しか記憶にないその女の子は、フワフワと柔らかそうな明るい茶髪に桜色の唇が印象的な、とても可愛い顔立ちをしていた。
〝コジマさん〟の登場で、また空気が変わった。彼女は私の隣を通りすぎ、まっすぐ裕貴のところへ行った。そして、そのまま彼の胸に飛び込んだ。
「彼女さんと、別れてください! 私、本気で景川さんのことが好きなんです!」
「えっ、ま、マリナちゃん、どうしてここに……」
裕貴のお陰で彼女のフルネームが〝コジママリナ〟だと判明し、すっきりしたところで私は「では、あとはお二人でごゆっくり」と言い、その場を離れた。コーヒー代は元彼の奢りになるけれど、このくらいしてもらってもバチは当たらないだろう。
カフェの出口で二人と合流し、私は「あーっ、疲れた!」と思わず本音を口にした。
そしてクスクス笑う親友を見つめ、「もしかして愛美って、魔女の子孫だったりする?」と言った。
「んなわけないでしょー。初めてあの男に会ったとき、私を見る目が恋人の友人を見る目じゃなかったから、何だか気に入らなかっただけだよ」と、今頃になって彼女はネタばらしをした。
「ああいうタイプは誘惑に弱いから、突つけばいくらでも埃が出ると思ったの。でもまさか、会社の子に手を出してたとはねー」
「何にしろ、愛美の言うとおりにして正解だったよ。あと今、無性に甘い物が食べたい! 早く上に行こ!」
そう言って私は、頼れる親友と、新しい恋人の手を引いた。愛美とリアムは驚いたように顔を見合わせ、二人同時に小さく笑った。
私もいつのまにか笑顔になっていた。
自分でも不思議なくらい、心は晴れ晴れとしていた。