結婚秒読みのアラサー女子、助けたカメに告られる。
「会ったばかりの人間に銀行口座を見せるのはやめたほうが……」と言いかけた私の口は、目の前に提示された銀行アプリの数字を見て、固まった。
(一、十、百、千……)
一度開いた口を閉じて、私は条件反射的に画面上の数字を脳内で数えていた。
(……十万。つまり、約三十二万……ポンド? 今、ポンドって何円くらい? 一ポンドが二百円だとして……、え、六千四百万円?)
「え、すごっ! リアムってこんなにお金を持ってるの!?」
「はい、ですから、ナギサの留学費用も出せます」
にこやかな笑顔で凄い台詞を口にする恋人を、私は呆然と見つめた。
「いや、それはとてもありがたいお話だけど、親でもないあなたが私の学費を出すって、明らかにおかしいよね?」
「そうでしょうか? そもそも僕が日本語を学ぶアプリを作ったのは、ナギサが理由です。ですからあのアプリはあなたのお陰でできたんです」
謎理論を掲げ、リアムはさらに、「それに、あなたがロンドンに来てくれたら、僕はすごく幸せです。人は自分の幸せのためにお金を払う生き物でしょう? それなら、僕がナギサの留学費用を出すのは当然では?」と続けた。
「いやいやいや……」
常識が違いすぎる相手に、私は思わず痛む頭を押さえた。
「それは、あなたが今、私を好きだからだよ。だけどこの先どうなるかわからないでしょう? 私がロンドンへ行ってから二人の関係が壊れたら、私のためにお金を使う理由もなくなるし……」
「僕のあなたへの気持ちが、そんな簡単に薄れると思うんですか?」
リアムの声から明るさが消えて、私はハッと顔を上げた。
悲しいような切ないような目で私を見て、リアムは言った。
「たしかに男女の愛情は不確定なものです。それを信頼に変えるのは二人が重ねた思い出と時間だけでしょう。僕たちにはまだそれがない。だから、あなたが僕を信用できないのも当然です」
「リアム……」
何か言いたかったけれど、頭の悪い私にはこんなとき、フォローするための言葉が何一つ浮かばない。それが悲しくて、申し訳ない。
(一、十、百、千……)
一度開いた口を閉じて、私は条件反射的に画面上の数字を脳内で数えていた。
(……十万。つまり、約三十二万……ポンド? 今、ポンドって何円くらい? 一ポンドが二百円だとして……、え、六千四百万円?)
「え、すごっ! リアムってこんなにお金を持ってるの!?」
「はい、ですから、ナギサの留学費用も出せます」
にこやかな笑顔で凄い台詞を口にする恋人を、私は呆然と見つめた。
「いや、それはとてもありがたいお話だけど、親でもないあなたが私の学費を出すって、明らかにおかしいよね?」
「そうでしょうか? そもそも僕が日本語を学ぶアプリを作ったのは、ナギサが理由です。ですからあのアプリはあなたのお陰でできたんです」
謎理論を掲げ、リアムはさらに、「それに、あなたがロンドンに来てくれたら、僕はすごく幸せです。人は自分の幸せのためにお金を払う生き物でしょう? それなら、僕がナギサの留学費用を出すのは当然では?」と続けた。
「いやいやいや……」
常識が違いすぎる相手に、私は思わず痛む頭を押さえた。
「それは、あなたが今、私を好きだからだよ。だけどこの先どうなるかわからないでしょう? 私がロンドンへ行ってから二人の関係が壊れたら、私のためにお金を使う理由もなくなるし……」
「僕のあなたへの気持ちが、そんな簡単に薄れると思うんですか?」
リアムの声から明るさが消えて、私はハッと顔を上げた。
悲しいような切ないような目で私を見て、リアムは言った。
「たしかに男女の愛情は不確定なものです。それを信頼に変えるのは二人が重ねた思い出と時間だけでしょう。僕たちにはまだそれがない。だから、あなたが僕を信用できないのも当然です」
「リアム……」
何か言いたかったけれど、頭の悪い私にはこんなとき、フォローするための言葉が何一つ浮かばない。それが悲しくて、申し訳ない。