結婚秒読みのアラサー女子、助けたカメに告られる。
 黙った私を見て、リアムはふっと表情を緩めた。
「ナギサが抱く懸念はもっともなものです。けれど僕も適当な気持ちでこんな提案をしているわけではありません。あなたにロンドンへ来てほしいのは本心です。そしてあなたが留学をためらう理由が費用の問題だけならば、幸い僕にはその悩みを解決する手段がある。それを伝えたかっただけです」
 五年前と変わらず、リアムの言葉は落ち着いていて優しく、そしてバカな私にもわかりやすく丁寧だった。
「ナギサ。僕は真剣にあなたとの将来を考えています。あなたが僕の元へ来てくれたら、一緒に暮らしてみれば、僕たちがこの先ずっと仲良く暮らせるか、パートナーとして支え合えるか、本物の相性がわかります。あなたは僕より年上だから、もう子どものことも考えているはずです。それを考慮しても、スタートは早いに越したことはない。けれどこれは全部僕の都合です。あなたにはあなたの人生設計があるでしょう。ナギサ、あなたはこれからどうしたいですか?」
「え……」
 思いがけないタイミングで超難解なお題を出されて、私は固まった。
(これから、どうしたいか……?)
 見つめ合ったままフリーズした私を、リアムは辛抱強く待ってくれた。
(私の、願望……。望み……。やりたいこと……。叶えたいこと……)
 昔はそんなのたくさんあった。両手の指じゃ足りないくらい、夢や願望は無限に湧いて出た。だけど今は、何も浮かばない。
(いつのまに私は、こんな空っぽの人間になっちゃったの……?)
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