結婚秒読みのアラサー女子、助けたカメに告られる。
私とカメ吉くんの出会いは、七年前に遡る。
当時発売されたばかりのシミュレーションアクションゲーム、『悠久のエルミタージュ』、通称〝エタエル〟。
発売前から話題のオープンワールドゲームで、ゲーマー一家に育ち立派なゲームオタクに育った私もエタエルの発売を心待ちにし、初日に購入したクチだった。
エタエルには友人の愛美と兄の倫生も参加していた。カメ吉くんが私たちのコミュニティに入ってきたのは、エタエルの発売から半年経った頃だ。
妹以上にゲーオタの兄、倫生には、オンラインゲームで培った人脈で世界中に友人がいた。その友人の甥っ子がカメ吉くんだった。
カメ吉くんは昔から人見知りが激しく、学校にも馴染めずにいたそうで。高校に上がってさらに状況が悪化し、不登校手前だった。
兄夫婦から相談を受けた叔父は、エタエルに彼を誘った。画面越しにでも誰かと会話し、ゲーム内で友だちでも作れば、実生活でもじょじょに人馴れしていくんじゃないか、という考えだったらしい。わざわざ日本人の多いコミュニティに入らずとも叔父のグループに参加すればいいのにと思ったが、本人が身内のいるところは嫌がった。思春期の男の子なら当然かもしれない。
カメ吉くんが日本に憧れがあったという理由でうちのコミュニティが選ばれたわけだが、兄でなく私が彼のお世話担当になった。
当時、兄の倫生は薬剤師になるための勉強でゲームに時間を割く余裕がなかったし、愛美は私に付き合ってプレイしているだけのライト層で、一番エタエルをプレイし英検2級を持つ私がガイドに適任だったのだ。
ちなみにエタエルで私は本名の「ナギサ」をハンドルに使い、愛美は「メグ」、兄は「みっちゃん」と名乗っていた。カメ吉くんもリアム・グレイというカッコイイ本名があったけれど、私たちの間ではずっと「カメ吉くん」だった。
カメ吉くんは意外とすぐに私と打ち解け、当時はずっと二人で行動した。たまに愛美や兄も加わったけれど、基本、私とカメ吉くんのペアだった。時差問題もあったけど、カメ吉くんのほうが私の時間に合わせてくれた。
初めは日本語も拙く、周りと距離を置いていたカメ吉くんだったけど、生来の優しく真面目な性格が他のメンバーにも伝わって、三カ月もすると私がいなくても大丈夫なくらい皆と仲良くなった。
そしてカメ吉くんが仲間になって一年経った頃、私は卒論やら就職準備やらで多忙になりエタエルをやめた。
ゲームはやめたけれど、カメ吉くんとは個人的な交流が続いた。生まれも育ちもロンドンなカメ吉くんから現地の話を聞くのは楽しかったし、彼とは好きなゲームや映画のジャンルが似ていたので、その手の話題でも盛り上がった。
お互いに「ナギサ」「カメちゃん」と呼び合って、国籍は違えど姉と弟のような関係だと思っていた。
けれどその関係も五年前、いきなりカメ吉くんの「もう無理です」という意味不明の台詞から、あっけなく終わりを迎えた。
私は理由を聞きたかったが、着信拒否されメールも届かなくなったため、これ以上の深追いは無理と諦めた。
正直言うと、あの時はガチで凹んだ。落ち込みすぎて仕事のミスも連発し、しばらくは浮上できなかった。いったい自分の何が悪かったのかと、これまでのやり取りを見返したりもした。
だけどやっぱり理由がわからなくて、わからないまま消化不良の悔恨だけが残った。
当時発売されたばかりのシミュレーションアクションゲーム、『悠久のエルミタージュ』、通称〝エタエル〟。
発売前から話題のオープンワールドゲームで、ゲーマー一家に育ち立派なゲームオタクに育った私もエタエルの発売を心待ちにし、初日に購入したクチだった。
エタエルには友人の愛美と兄の倫生も参加していた。カメ吉くんが私たちのコミュニティに入ってきたのは、エタエルの発売から半年経った頃だ。
妹以上にゲーオタの兄、倫生には、オンラインゲームで培った人脈で世界中に友人がいた。その友人の甥っ子がカメ吉くんだった。
カメ吉くんは昔から人見知りが激しく、学校にも馴染めずにいたそうで。高校に上がってさらに状況が悪化し、不登校手前だった。
兄夫婦から相談を受けた叔父は、エタエルに彼を誘った。画面越しにでも誰かと会話し、ゲーム内で友だちでも作れば、実生活でもじょじょに人馴れしていくんじゃないか、という考えだったらしい。わざわざ日本人の多いコミュニティに入らずとも叔父のグループに参加すればいいのにと思ったが、本人が身内のいるところは嫌がった。思春期の男の子なら当然かもしれない。
カメ吉くんが日本に憧れがあったという理由でうちのコミュニティが選ばれたわけだが、兄でなく私が彼のお世話担当になった。
当時、兄の倫生は薬剤師になるための勉強でゲームに時間を割く余裕がなかったし、愛美は私に付き合ってプレイしているだけのライト層で、一番エタエルをプレイし英検2級を持つ私がガイドに適任だったのだ。
ちなみにエタエルで私は本名の「ナギサ」をハンドルに使い、愛美は「メグ」、兄は「みっちゃん」と名乗っていた。カメ吉くんもリアム・グレイというカッコイイ本名があったけれど、私たちの間ではずっと「カメ吉くん」だった。
カメ吉くんは意外とすぐに私と打ち解け、当時はずっと二人で行動した。たまに愛美や兄も加わったけれど、基本、私とカメ吉くんのペアだった。時差問題もあったけど、カメ吉くんのほうが私の時間に合わせてくれた。
初めは日本語も拙く、周りと距離を置いていたカメ吉くんだったけど、生来の優しく真面目な性格が他のメンバーにも伝わって、三カ月もすると私がいなくても大丈夫なくらい皆と仲良くなった。
そしてカメ吉くんが仲間になって一年経った頃、私は卒論やら就職準備やらで多忙になりエタエルをやめた。
ゲームはやめたけれど、カメ吉くんとは個人的な交流が続いた。生まれも育ちもロンドンなカメ吉くんから現地の話を聞くのは楽しかったし、彼とは好きなゲームや映画のジャンルが似ていたので、その手の話題でも盛り上がった。
お互いに「ナギサ」「カメちゃん」と呼び合って、国籍は違えど姉と弟のような関係だと思っていた。
けれどその関係も五年前、いきなりカメ吉くんの「もう無理です」という意味不明の台詞から、あっけなく終わりを迎えた。
私は理由を聞きたかったが、着信拒否されメールも届かなくなったため、これ以上の深追いは無理と諦めた。
正直言うと、あの時はガチで凹んだ。落ち込みすぎて仕事のミスも連発し、しばらくは浮上できなかった。いったい自分の何が悪かったのかと、これまでのやり取りを見返したりもした。
だけどやっぱり理由がわからなくて、わからないまま消化不良の悔恨だけが残った。