結婚秒読みのアラサー女子、助けたカメに告られる。
「……さて」
ひとまず玄関の施錠だけ済ませ、私はすっかり冷めたピザを見た。
「とりあえずさ、このピザ食べない? それともお腹空いてない?」
「いえ、あの、じつは空腹です……」
五年前よりはるかに日本語力を上げたカメ吉くんが、はにかんだ顔で答えた。……くっそぅ、イケメンだな。
二人でテーブルを挟んで座り、私は静かにピザを食べる美青年を見つめた。
「……なんかさ、すっごく見た目が変わったね。前はもっと髪も長かったし、いつも黒縁の瓶底眼鏡を掛けてたし。あとすごく痩せたね? いつのまにそんな格好良くなっちゃったの?」
「えっ!」
とたんにカメ吉くんは顔を上げ、キラキラした表情で私を見た。
「僕、カッコイイですか?」
「え……、まぁ、格好良いよ、普通に……」
「わぁ……嬉しいです。じつはみっちゃんに言われたんです。ナギサの理想はLORのクライヴだから、髪を短くしてそれっぽい格好で会いにいったら喜ぶって。だからバッサリ髪を切って、眼鏡もコンタクトにしたんです。良かった。みっちゃんの言うとおりだった……」
「あのク◯兄貴め、よけいなことを……」
「え?」
「いや……」
私は相手の顔をまともに見られないまま、テーブルの隅っこを見つめて独り言のように言った。
「すごく、いいと思う……」
「はい。ありがとうございます!」
そう言って、かつてのゲーオタ陰キャ青年は、眩しいほどの笑顔を見せた。
「はぅ……」
心臓を撃ち抜かれて、私は胸を押さえた。
でも逆に頭は冷静になった。
「カメ吉……いやリアムくんは、どうして今になって私に会おうと思ったわけ? あれからもう五年だよ?」
「カメ吉でいいですよ。昔は僕のことをカメちゃんって呼んでいたじゃないですか」
「いや、その顔でカメ吉は無理があるって……!」
リアム青年はキョトンとし、「ではリアムと呼んでください。くんはいりません」とまた無邪気な笑顔で言った。
「……了解。じゃあ、リアム……。あなたは、いったいどういう理由で私に会いにきたの。五年間、まるきり音沙汰なかったのに」
「……それは」
手にした食べかけのピザを皿に戻して、リアムは神妙な顔つきで答えた。
「みっちゃんからナギサが結婚するかもしれないと聞いて。今会いにいかないと一生後悔すると思ったんです」
「え、結婚?」
「今お付き合いしている恋人と、結婚秒読みと聞きました」
(倫生ぉ~~~!!)
私はおしゃべりな兄に怒号を送り、「ハーッ……」とため息をついた。
「……たしかに結婚の話は出たよ。裕貴……恋人がこの十月に課長に昇進することが決まって、プロポーズされたの」
〝プロポーズ〟という単語にリアムの表情が変わった。
「明後日、一緒に指輪を買いにいく約束もしてる。でも私、このことは家族の誰にも話していないんだけど」
「みっちゃんは、メグさんから話を聞いたと言っていました」
「はぁ!?」
いきなり友人の名前が出て、私はテーブルに手を突いた。
「愛美が兄貴に話したって!? なんで!?」
「その、メグさんはこの結婚に賛成ではなくて、でも面と向かって反対してもナギサが反発するだけだから、兄のみっちゃんに相談した、……そうです」
「はぁあ!?」
……たしかに、愛美は私と裕貴の交際に良い顔をしなかった。二人が会ったのは一度きりなのに、その一度で愛美は彼を嫌うようになった。いったい何が気に入らなかったのかわからないけれど、「なんとなく嫌な感じがする」と彼女の答えも曖昧だった。
兄には、というか家族には、まだ一度も裕貴を会わせていない。私に彼氏がいることは知っているけれど、あまり子に干渉しない親なせいもあり、婚約指輪を買ってから、あらためて顔合わせの席を設けるつもりでいた。
ひとまず玄関の施錠だけ済ませ、私はすっかり冷めたピザを見た。
「とりあえずさ、このピザ食べない? それともお腹空いてない?」
「いえ、あの、じつは空腹です……」
五年前よりはるかに日本語力を上げたカメ吉くんが、はにかんだ顔で答えた。……くっそぅ、イケメンだな。
二人でテーブルを挟んで座り、私は静かにピザを食べる美青年を見つめた。
「……なんかさ、すっごく見た目が変わったね。前はもっと髪も長かったし、いつも黒縁の瓶底眼鏡を掛けてたし。あとすごく痩せたね? いつのまにそんな格好良くなっちゃったの?」
「えっ!」
とたんにカメ吉くんは顔を上げ、キラキラした表情で私を見た。
「僕、カッコイイですか?」
「え……、まぁ、格好良いよ、普通に……」
「わぁ……嬉しいです。じつはみっちゃんに言われたんです。ナギサの理想はLORのクライヴだから、髪を短くしてそれっぽい格好で会いにいったら喜ぶって。だからバッサリ髪を切って、眼鏡もコンタクトにしたんです。良かった。みっちゃんの言うとおりだった……」
「あのク◯兄貴め、よけいなことを……」
「え?」
「いや……」
私は相手の顔をまともに見られないまま、テーブルの隅っこを見つめて独り言のように言った。
「すごく、いいと思う……」
「はい。ありがとうございます!」
そう言って、かつてのゲーオタ陰キャ青年は、眩しいほどの笑顔を見せた。
「はぅ……」
心臓を撃ち抜かれて、私は胸を押さえた。
でも逆に頭は冷静になった。
「カメ吉……いやリアムくんは、どうして今になって私に会おうと思ったわけ? あれからもう五年だよ?」
「カメ吉でいいですよ。昔は僕のことをカメちゃんって呼んでいたじゃないですか」
「いや、その顔でカメ吉は無理があるって……!」
リアム青年はキョトンとし、「ではリアムと呼んでください。くんはいりません」とまた無邪気な笑顔で言った。
「……了解。じゃあ、リアム……。あなたは、いったいどういう理由で私に会いにきたの。五年間、まるきり音沙汰なかったのに」
「……それは」
手にした食べかけのピザを皿に戻して、リアムは神妙な顔つきで答えた。
「みっちゃんからナギサが結婚するかもしれないと聞いて。今会いにいかないと一生後悔すると思ったんです」
「え、結婚?」
「今お付き合いしている恋人と、結婚秒読みと聞きました」
(倫生ぉ~~~!!)
私はおしゃべりな兄に怒号を送り、「ハーッ……」とため息をついた。
「……たしかに結婚の話は出たよ。裕貴……恋人がこの十月に課長に昇進することが決まって、プロポーズされたの」
〝プロポーズ〟という単語にリアムの表情が変わった。
「明後日、一緒に指輪を買いにいく約束もしてる。でも私、このことは家族の誰にも話していないんだけど」
「みっちゃんは、メグさんから話を聞いたと言っていました」
「はぁ!?」
いきなり友人の名前が出て、私はテーブルに手を突いた。
「愛美が兄貴に話したって!? なんで!?」
「その、メグさんはこの結婚に賛成ではなくて、でも面と向かって反対してもナギサが反発するだけだから、兄のみっちゃんに相談した、……そうです」
「はぁあ!?」
……たしかに、愛美は私と裕貴の交際に良い顔をしなかった。二人が会ったのは一度きりなのに、その一度で愛美は彼を嫌うようになった。いったい何が気に入らなかったのかわからないけれど、「なんとなく嫌な感じがする」と彼女の答えも曖昧だった。
兄には、というか家族には、まだ一度も裕貴を会わせていない。私に彼氏がいることは知っているけれど、あまり子に干渉しない親なせいもあり、婚約指輪を買ってから、あらためて顔合わせの席を設けるつもりでいた。