君の世界から抜け出せない

あの頃の私たちは

私が冬馬と出会ったのは私の記憶にないくらい
小さい頃。

気がつくといつもそばにいた。

好きになるなんて簡単だった。

中学も後半になると、誰と誰が付き合った、誰がモテるという情報の価値が上がる。

「やっぱり,冬馬かっこいいよね〜」
「冬馬昨日も先輩に告白されたらしいよ」
「私冬馬のこと好きかも」

クラスメイトの、身近な友達の、冬馬に対する態度とか視線に熱がこもっていると気づく度に
私は嫉妬していた。


この頃の冬馬は声変わりもして、男子から男性へとさらに磨きがかかっていた。

私含め中学のほとんどの子に幼さが色濃く残っているというのに。


「今日も友達が冬馬のことかっこいいって言ってたよ。やっぱり人気だね」

私は嫉妬を彼にぶつけるようにこう言うようになってしまった。

中学入学式したての私の方が可愛げあったかな。

でも、決まって冬馬は私に聞いた。

「百合は俺のことどう思ってんの。」
「かっこいい、と、思ってる、」

そして私がこうと言うと頭を撫でてくれた。

こんな甘いことも前までは照れながらしてくれたというのに、今は手慣れた感じに。


私が一番知りたいことは隠したままで。


中学2の文化祭。11月。
私は生まれて初めて告白された。

「ずっと百合のこと見てたんだ。ずっとそばにいたい。付き合ってください。」

すごく嬉しかった。ちゃんと私を見ててくれる人なんだって。
でも、同時に込み上げる涙を必死に私は堪えた。

だって、
私に告白したのは冬馬じゃなかったから。

結局、私が告白を断った人は先輩たちの間で有名なイケメンだったらしく。
すぐに私が告白を断ったことが噂として広まった。

冬馬の方がずっとかっこいいと思うけどな。


「八谷先輩の告白断ったってほんとかよ。」
「八谷って?あ、あの!」
「名前くらい覚えといてやれよ。」

「なんで断った?あの先輩イケメンじゃん。」

冬馬のことしか眼中にないから、だなんて恥ずかしくて言えなかった。

「タイプじゃないから。」

「俺って百合のタイプ?」

「タイプ、かな」

私のこの一言を機に私たちは学校でも放課後でもずっと一緒にいるようになった。

朝は
「おはよう、冬馬。寝癖ついてるよ。」
「百合に直してほしい」
そんな会話を当たり前のように交わして。

昼は
「今日の俺の教科担任さ、白のスーツ?みたいなの着てた。百合見た?」
「見た見た!あの先生いつもなんか凄いセンスの服来てるよね!」
「それを世間ではダサいって言うんだよ」
って言いながら一緒にお昼を食べて。

夜は
たまにだけど寝落ち電話をした。
もっと寝落ち電話したい、と言うと
「そんなんじゃ俺の理性もたないだろ。」
そう言ってくれた。


冬馬は私を大切にしてくれてると思ってた。
クラスメイトも私たちを"お似合いカップル"なんて言ってくれていた。


確実に冬馬に溺れていた。



一度も冬馬に好きだ、と言われていないのに気づかないくらいには。



そんな薄い関係だから、私と冬馬はあの日を乗り越えられなかったんだ。


< 6 / 10 >

この作品をシェア

pagetop