君の世界から抜け出せない

律と言う人

図書室で会って以来、毎日図書室で律くんと顔を合わせるようになった。

私が図書室に行くのはお昼休み。

人の少ないお昼休みのタイミングで勉強するために早弁をする。

「あ!今日も百合ちゃんお弁当食べてる!」

席替えで隣になった若菜ちゃんがキャッキャと私に話しかける。

「若菜はお弁当は彼氏と食べるんだぁ〜。
ガリ勉百合ちゃんは大変だね。」
「そんなことないよ。」

長くて綺麗な髪を緩く巻いて、完璧なメイクをしている若菜ちゃんに私の一番突かれたくない所を突かれてしまった。

「百合ちゃんは、彼氏とかいないの?」

彼氏の有無とか、メイクの完成度とかそういう部分でお互いを評価する私のクラスの女子たちには全くついていけない。

「百合ちゃん可愛くて綺麗だから絶対メイク映えるのに。髪下ろすだけでも違うんじゃない?」
「あはは、私には難しいかな」

曖昧に答えると私に興味をなくしたのか若菜ちゃんはどこかへ行ってしまった。

少し寂しい。

でも今の私には勉強くらいしかない。

冬馬以外の人を好きになれそうにもないし。


お昼休み、図書室に行くと律くんがいた。

「百合、俺の隣どう?今なら数学の質問自由にしていいよ券ついてくるよ」
「何それ!律くんってほんと面白い。」

律くんは長身でモデルのようなスタイルや整った甘い顔つきにさらにミステリアスな雰囲気も相まって最初は話しにくいかと思ってだけど、すごく話しやすいしいつも私を笑わせてくれる。

でも、私たちは受験生で勉強目的で図書室に来ている。
1言2言会話をするとすぐに勉強モード。

不思議と律くんなら隣にいても全く気にならないどころか安心さえする。

お昼休みを告げるチャイムが学校に鳴り響く。

「今日も俺ら頑張った〜!」
「自分で言ったらカッコよくないよ」

律くん相手なら何も気にせずにいれる。

「え、俺って百合から見てカッコよくない?
あー、結構ショックかも。」
「そんなことない!!
律くんいつもかっこいいし一緒にいて楽しいよ!
私こんなに楽しく過ごせる男子律くんしかいないもん」

すると律くんが手で彼の口を押さえながら顔を赤く染めた。

「律、くん?」
「百合、その言葉他の誰にも言わないで」

切実さを含んだ声と赤く染まった律くんにつられて私まで体温が上がる。

その瞬間、バッと腕を掴まれた。

律くんはそのまま走り出す。


優しい手の引き方だな。
これだけで彼の人柄がわかる気がする。

不思議と周りの生徒の視線が気にならなかった。

律くんの早い足について行くのに必死なはずなのにゆっくり時間が流れてる気がした。


キー、と急に律くんが立ち止まった。
不思議に思って彼の顔を見上げると、驚いてるみたいな表情がある。

なんだか最近はいろんな律くんの表情を見れてる気がする。

「ごめん、急にこんなことして。
百合が見られてたからチャイムも鳴りそうだし」

だんだん彼の声が小さくなった。

「怖かったろ。嫌いになった?」
「ふふ」
「え?」

なんだか律くんが可愛い。

「こんなことで嫌いになるわけないでしょ。
ほら、行くよ」



私、こんなに積極的になったことあったけ。



心の中で律くんの存在が大きくなるのを認めたくないのに。

翌週。
今日はいよいよ模試の日。

私は中学生の頃からとにかく本番に弱い。

本番に強い冬馬は試験直前の休み時間も友だちと話してるくせに私よりずっと点数が良かった。

毎回そんなことで自己嫌悪に陥っていた。


「あ、百合おはよう。ガチガチだな。」

地面を向いて歩いていると上からいつもより少し硬い声が落ちてくる。

「おはよう。律くんもいつもと違うじゃん。」

「だって今日、模試だよ?緊張して当たり前。
本気で取り組んでる証拠だろ。」

律くんは最近、私の前でも口調が崩れることが
増えた。

心開いてくれてるってことかな。

「だね。そういえば律くん志望校どこ?
あ、こういうのはあんま聞いちゃいけないよね」

「百合ならいいよ。」

律くんの一言で模試の緊張なんてすっかり消えていた。

「俺はね、百合と一緒」
「え!?一緒なの?え、てゆうか私律くんに話したことあったっけ?」

律くんに全く話した覚えなんてない。

「先週図書室で勉強した時新しいノートだった?
そこにおっきく書いてたじゃん」

まさかバレていたなんて。

「み、見てたの。」

「なんで俺が百合を見てたかわかる?」



ごめんね。律くん。

私、今の律くんの笑顔に冬馬を重ねてる。




いつまで1人でいればいい?

寂しいよ、冬馬




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