君の世界から抜け出せない

私が1番幸せだった頃

5年前。中学の入学式の日。
私はクラス発表の掲示板の前ではしゃいでいた。

「あー!冬馬と同じクラスだ!」

人前なのに大声を出してしまい、すぐに自分の口を手で覆う。

穴があったら入りたいってこういうことか。

私と冬馬はまだ小学3年生の1回しか同じクラスになったことがない。

ご近所さんで、
家の近くで会ったら手を振ってくれて、
他の男の子よりずっとかっこよくて、
私のお母さんにも礼儀正しい、
そんな男の子の幼馴染、冬馬。

ワクワクした気持ちで教室に入る。

冬馬、もう来てるかな。


あれ、まだ冬馬は来てないみたい。

すぐに親友の紬を教室で見つけた。

「紬〜!同じクラスだね」
「ほんとだね。私たち小学校でも同じクラスになったことないから、初めてだよね?」

「そうだよ〜、よろしくね!」
「こちらこそよろしくね!
てゆうか、百合、さっきクラス発表の掲示板の前で話しかけたのに。」

気づかなかった。
冬馬のことで頭いっぱいで。

「さ、最近耳悪いのかも?」
「百合ったら、どうして疑問形?」

紬と話しながらも私の意識は廊下に向いていた。



まだ来ないかな。

寝坊したのかな。
冬馬のお母さんいるし、寝坊はありえないか。

もしかして今日は会えないのかな。
それは寂しいからやだな。

いや、私がクラス発表の掲示板見間違えた?



「よー!冬馬!遅いぞー」
「まじ!?冬馬同クラあつすぎる!」


良かった。会えた。



「はーい、皆さん席についてー」

新しい担任の指示を合図に皆んなが席につく。


「はよ、百合。」
「おはよう!冬馬、まさか同じクラスなんてね。
私、すごいびっくり。」

冬馬と私の出席番号は前後だった。
冬馬が先で、私が後。

「俺は嬉しいけど?」
「、え?」

すぐに私の顔が赤く染まる。

「改めて進級おめでとうございます。
今日は最初に8:50から入学式です。
そのあと教科書配布がありまして、…」


先生の説明なんて全く耳に入ってこない。


どうしよう。
このクラス、今までで一番楽しくなるかも。

入学式の直前の待ち時間。
クラスごとに出席番号順に並んで待機してた。

「ね、冬馬どうして今日ギリギリだったの?」
「え?
あ、いや、ヒーローは遅れて参上する的な?」

本当だろうか?
目の前の冬馬は、見上げないと行けないくらい背が高いのに、それと反して少しバツが悪そう。

「いや、お前何言ってんだよ。
腹壊したって言ってたじゃん。」

昔から冬馬と仲がいい悠人くんがつっこむ。

冬馬もそんなことあるんだ。
なんか可愛い。

初めて男の子にこんな温かい感情を抱いた。

「ちょ、悠人。百合には言うなって言ったろ」
「いいじゃん、ね?百合ちゃん」

「うん、全然。私もお腹弱いし。」
「本当?」

あぁ、なんか冬馬がほんと可愛い。



この時の少し顔を赤くした冬馬は、今でも目に焼きついている。


私はどこで間違えたのかな。

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