君の世界から抜け出せない

迫る影

私は律くんがくれた幸せがこれからの当たり前になると思ってた。

いまだにあの影が私を追いかけていることに気づかずに。



連日のテスト、模試も終わり一息ついた。

受験生って大変だな〜。
どんなに勉強しても不安は減らない。

今日は担任との進路面談の日。

約束の時間に面談室に来た。

ぽん、ぽん。

!?

「お疲れ、百合もこれから面談?
話めっちゃ長いから覚悟した方がいいかもな。」

び、びっくりした〜。

どうやら私が気づかないうちに律くんが私の後ろに来ていたらしい。

「そう。私はこれから。ていうことは律くんはもう終わったの?」

「俺は30分くらい前に終わった。タイムテーブルに次の面談が百合って書いてあったから待ってた、、って言ったらどうする?」

言われた瞬間,顔に一気に熱が集まる。

最近、律くんのメロさにやられてばかりいる気がする。


でも,自然と心地いい。

律くんの声好きだなって思っちゃったり。

「え?そんなわけないでしょ?
もー、心臓に悪い冗談言わないでよ」

「、、、、ほんとなんだけどな」

「え?なんて?」

「無自覚百合ちゃんは知らなくていいよ。
っていうか、時間平気か?」

面談室を覗くと担任がスタンバイしていた。
担任を見ると一気に現実に引き戻される。

「ほら、行けよ。おバカ百合ちゃん。」

「そこまで言わなくても!行きますよーだ」


面談室のドアに映った私は幸せそうな顔をしていた。


このままがいいな。


面談が終わると面談室のすぐ前の椅子に
律くんがいた。

足が長いと座ってるだけで様になる。

彼を照らす斜め後からの夕日が律くんを数倍カッコよく映してる気がする。

どうやら参考書に集中しているらしく,私に全く気づくそぶりがない。

「りーつくんっ。こんなところにどうして?」

なんとなくこの答えを私は気づいていたけど、彼の口から聞きたかった。

「やっと終わったな。
百合の顔が見たくて待ってた。」

「へ?」

恥ずかしげもなくまっすぐ言われるから破壊力が半端ない。

「百合さん、なんか顔赤くないですか〜?」

「あ、赤くない!夕日のせいじゃない?」

律くんは、焦る私に笑いながらさらりと私の手を取って歩き出す。

それについて行けずに私の足が固まる。

「あー、手?百合がどっかに行かないように。
一緒に帰んない?」

くすぐったいのに、すごく満たされてる。

「しょうがないなぁ。帰ろ?」

私がそう言うと、律くんの顔が赤くなったのは気のせいかな?

気のせいじゃないといいな。

校門まで歩いている途中、違和感に気づく。

なんか、私見られてる?

律くんが見られてるのかもしれない。

いや、そうだとしたら女の子の黄色い声援が聞こえるはず。

だとしたらどうして?



「あの女子じゃね?可愛い顔して裏ではあんなことしてたなんてヤバいな。」

「それな!俺狙ってたのに。」




周囲から聞こえる私に対する非難の声。




「ーー昔、5人も虐めてたって異常な女だな。」



やめて。


"虐め"と言う単語で思い出したくもない記憶が、感情がフラッシュバックする。

息が苦しい。

「律も趣味わりーな。律、脅されてんのか?」

やめて。

やめて。

やめてよ。


その瞬間、私の横にいた律くんが私の手を取って走り出した。

私をここから逃すみたいに。


律くん走るのが早い。

でも、そのおかげで周囲の声をあまり気にしなくて済んだ。

律くんは今どんな気持ち?

私を信じてくれる?


しばらく走ると律くんは学校から少し離れた公園に入った。


私をベンチに座らせると私から離れた律くん。


幻滅された?嫌われた?


怖くて顔を上げられずにいると、ほっぺたに冷たい感触。


「よく、ココア飲んでるよね。勝手に選んだけどこれでいいか?」

顔を上げると屈んで私に目線を合わせてくれている律くんがいた。

「ありがとう。」

律くんはキャップを緩めたココアを私に差し出して私の横に腰掛けた。

私は受け取ったココアを飲みながら、どう切り出そうか悩んでしまう。



冬馬でさえ信じてくれなかったのに、律くんは私を信じてくれるだろうか。

できれば、律くんとの日常を失いたくない。



「百合、俺は詳しいことは何も知らないし、昔の百合のことも知らない。けど、一つだけ言えることがある。」


律くんは私の右手に彼の左手を重ねながら言う。


「俺は何があっても百合の味方でいる。昔聞いたんだけどさ、人を信じるってその人のどんな面も行動も過去も全部受け止める覚悟がある事を言うらしいよ。」



律くんの視線が私のそれとぶつかる。

きっと私は今酷い顔をしている。



「俺は百合を信じるよ。でも、同時に百合を守って支えたいとも思う。だからさ、何があったのか百合の口から聞きたい。」


律くんは私を信じてくれた。


「分かった。律くん、ほんとにありがとう。」

私は涙声のまま昔を語り出す。


あの地獄のような日々を。


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