チョコより甘い光〜バレンタインチョコの行方〜
side美月
美月が理久の家に戻った時、理久はまだ帰っていなかった。
及川くんだけでなく、理久にも小さな嘘がばれている。
どうしてこんなことになってしまったのか。
バチが当たったとしか思えない。
可愛くラッピングしたバレンタインチョコは、もちろん及川に渡す予定などない。
今は、美月の部屋に置いてある。
たったあんな小さな箱ひとつが、こんなにややこしいことになるなんて。
やはりバレンタインデーは、つくづく厄介なイベントだ。
美月はキッチンへ行き、グラスに水を注いだ。
その時、玄関の解錠音が聞こえた。
理久が帰ってきた。
どんな表情をしているのだろう。
胸の奥が、少し変な音を立て始める。
「お帰りなさい」
美月が声をかけると、理久の美しい顔がこちらを向いた。
「ただいま」
表情は、特に普段と変わらなかった。
ただ、手に持っている大きめの袋が、すぐに美月の目に入る。
「これ、もしかしてチョコですか?」
「そうだよ」
美月が想像していたよりも、はるかに多いチョコレートが入っているようだった。
「気になる?」
「……そうですね。見てもいいですか?」
「お好きにどうぞ」
理久は上着を脱ぎ、ソファに座った。
チョコレートには、あまり興味がなさそうに見える。
美月が袋の中をのぞくと、有名なチョコレートの箱が次々と現れた。
「これ、あの有名なショコラティエの……。あ、これはデパートの催事場で行列ができていたところの……あ、これも」
先日、老舗デパートの催事場に足を運んだ時、美月はあまりにもたくさんの人たちが売り場でチョコレートを買っている光景を見た。
あの人たちが買ったチョコレートは、こうやって誰かの手に渡るのか。
美月は一人で納得するように、箱を眺めていった。
「美月は、ずいぶんチョコに詳しいんだね」
「いえ、全然詳しくないですよ」
「……そんなふうには見えないけど?」
理久が少し疑うような視線を向けてくる。
けれど美月は、先日初めてバレンタインの催事場という場所に足を運んだ程度だ。
本当に詳しいわけではない。
むしろ、こんな有名な高級チョコレートをたくさんもらっている理久に、自分が手作りしたチョコを渡して、本当に喜んでもらえるのか。
今になって、不安が膨らんでくる。
「欲しいなら、あげるよ」
その余裕のある言い方を、嫌味として受け取るべきか。
ありがたく受け取るべきか。
美月は少し返事に困った。
「こんなにたくさんの好意を、簡単に人に渡していいんですか?」
「……妬いてるの?」
「妬いてません」
思わず、少し強めの口調になった。
及川くんだけでなく、理久にも小さな嘘がばれている。
どうしてこんなことになってしまったのか。
バチが当たったとしか思えない。
可愛くラッピングしたバレンタインチョコは、もちろん及川に渡す予定などない。
今は、美月の部屋に置いてある。
たったあんな小さな箱ひとつが、こんなにややこしいことになるなんて。
やはりバレンタインデーは、つくづく厄介なイベントだ。
美月はキッチンへ行き、グラスに水を注いだ。
その時、玄関の解錠音が聞こえた。
理久が帰ってきた。
どんな表情をしているのだろう。
胸の奥が、少し変な音を立て始める。
「お帰りなさい」
美月が声をかけると、理久の美しい顔がこちらを向いた。
「ただいま」
表情は、特に普段と変わらなかった。
ただ、手に持っている大きめの袋が、すぐに美月の目に入る。
「これ、もしかしてチョコですか?」
「そうだよ」
美月が想像していたよりも、はるかに多いチョコレートが入っているようだった。
「気になる?」
「……そうですね。見てもいいですか?」
「お好きにどうぞ」
理久は上着を脱ぎ、ソファに座った。
チョコレートには、あまり興味がなさそうに見える。
美月が袋の中をのぞくと、有名なチョコレートの箱が次々と現れた。
「これ、あの有名なショコラティエの……。あ、これはデパートの催事場で行列ができていたところの……あ、これも」
先日、老舗デパートの催事場に足を運んだ時、美月はあまりにもたくさんの人たちが売り場でチョコレートを買っている光景を見た。
あの人たちが買ったチョコレートは、こうやって誰かの手に渡るのか。
美月は一人で納得するように、箱を眺めていった。
「美月は、ずいぶんチョコに詳しいんだね」
「いえ、全然詳しくないですよ」
「……そんなふうには見えないけど?」
理久が少し疑うような視線を向けてくる。
けれど美月は、先日初めてバレンタインの催事場という場所に足を運んだ程度だ。
本当に詳しいわけではない。
むしろ、こんな有名な高級チョコレートをたくさんもらっている理久に、自分が手作りしたチョコを渡して、本当に喜んでもらえるのか。
今になって、不安が膨らんでくる。
「欲しいなら、あげるよ」
その余裕のある言い方を、嫌味として受け取るべきか。
ありがたく受け取るべきか。
美月は少し返事に困った。
「こんなにたくさんの好意を、簡単に人に渡していいんですか?」
「……妬いてるの?」
「妬いてません」
思わず、少し強めの口調になった。