チョコより甘い光〜バレンタインチョコの行方〜

February 13

February 13

日勤が終わると、美月は病棟の同僚たちと、予約していたレンタルキッチンへ向かった。

材料は、その日勤務ではなかった後輩がまとめて買い出しを済ませてくれていた。

ラッピングは個人で用意することになっていたので、美月も先日選んである。

チョコレート色の箱に金色の文字。

包み紙は淡いピンクにした。

自分にしては、ずいぶん可愛らしいものを選んだと思う。

今回は人数もいるため、いくつかの種類のトリュフを作ることになった。

「結構難しいね」

「でも、一人で作るより種類を作れるから、こういうのも楽しくていいですね」

そんな話をしながら、作業は思った以上に盛り上がった。

後輩の一人は彼氏にあげるらしく、周囲から興味津々に質問されている。

美月はその会話を聞きながら、ガナッシュの周りにコーティングチョコを塗っていった。

「それで、綾瀬さんは?」

突然自分の名前を呼ばれ、美月は顔を上げた。

気づけば、みんながこちらを見ている。

「綾瀬さんは、誰にあげるんですか?」

後輩の一人が、目をきらきらさせながら尋ねてくる。

もちろん、本当のことを言えるはずがない。

まだ理久とのことはオープンにできない。

となると、ここは何とか言い逃れるしかない。

美月は一拍置いてから、淡々と答えた。

「及川くんです」

及川蒼真は外科レジデントで、美月が新人看護師だった頃からの知り合いだ。

恋愛とは無縁の、戦友に近い関係だった。

「及川くんって、外科の及川先生ですか?」

美月は首を縦に振る。

「及川先生って、結婚しましたよね?」

「うん。そうだね」


まずい。


人選を間違えたかもしれない。

けれど、ここまで来たら押し通すしかない。

「綾瀬……本当は及川先生のこと……」

「不毛な恋をする気はないので、ご心配なく」

「ま、確かに綾瀬が仲良くしてる医者なんて及川先生くらいか」

「はい。友チョコです」

「戦友チョコですね。素敵」

後輩たちが楽しそうに盛り上がる。

一瞬だけ不穏な空気が漂ったものの、普段から及川以外の医師とほとんど交流しない美月のことだ。

周囲はすっかり納得したようだった。

出来上がったトリュフを箱に詰め、ラッピングをする。

チョコレート色の箱に、淡いピンクの包み紙。

自分で作ったにしては、かなり満足のいく仕上がりだった。


――理久にあげよう。


そう思うと、美月は二月十四日が少しだけ楽しみになった。
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