【番外編】元・訳あり男装剣士の初めての舞踏会
ベイルは、急かすこともなく、ただ待っている。
セレスティアは、もう一度ベイルの目を見た。
胸はまだ、どきどきしている。
けれど。
今度は、その鼓動から逃げようとは思わなかった。
「私……」
一度、言葉が止まる。
胸の奥が、大きく跳ねた。
それでも。
今度は逃げない。
ベイルを見たまま。
「ベイルのことが……」
先ほど気づいたばかりの、その気持ちを。
今度は、自分の意思で口にする。
「好きです」
「…………」
ほんの一瞬。
ベイルから返事がなかった。
ただ、セレスティアを見つめている。
「ベイル……?」
名を呼ばれて。
鋼色の瞳が、僅かに揺れた。
それでも、すぐには言葉が返ってこない。
「…………」
やがて。
「……俺も」
低い声が返ってきた。
「……えっ?」
今度は、セレスティアが瞬いた。
ベイルはまっすぐにその瞳を見つめる。
「俺も、セレスティアのことが……」
「好きだ」
「…………」
どくん。
また。
胸が、大きく鳴る。
けれど。
もう。不思議には思わなかった。
胸元へ手を当てる。
その奥では、まだ鼓動が速く鳴り続けている。
昨日までは、知らなかった。
今日になって、ようやく知った。
好きな人に見つめられると。
胸が高鳴ること。
好きな人と踊ると。
いつもとは違ってしまうこと。
そして。
好きな人から「好き」と言われることが。
こんなにも――。
「……嬉しい」
ふわり、と。
セレスティアの顔に笑みが広がった。
嬉しい。
ただ、それだけの。
何の飾り気もない、まっすぐな笑顔だった。
その瞬間。
再び。
ベイルの表情が、止まった。
「…………」
鋼色の瞳が、セレスティアを見つめたまま動かない。
まるで。
目の前の笑顔から、目を逸らすことさえ忘れてしまったように。
「ベイル?」
呼びかけると。
ようやく我に返ったように、ベイルが瞬いた。
「……いや」
なぜか、視線を逸らされる。
「どうかしましたか?」
「……何でもない」
「?」
明らかに、何でもないようには見えない。
セレスティアは、そんなベイルをじっと見つめた。
何だろう。
黙り込んで。
視線を逸らして。
「…………」
ふと。
少し前までの自分を思い出した。
ベイルの顔をまともに見ることすらできなかった、自分を。
セレスティは、僅かに目を見開いた。
「……ベイルも、どきどきしているのですか?」
「………」
返事がない。
けれど。
今のセレスティアには、もう分かる。
「……しているんですね」
「…………」
つい先ほどまで。
自分だけに起きている、おかしなことだと思っていたのに。
ベイルも同じなのだ。
そう思うと、なんだか嬉しくなった。
「ふふっ」
セレスティアは楽しそうに笑った。
「おあいこですね」
「…………」
するとベイルは、片手で自分の胸元を押さえた。
「セレス」
「はい?」
「……頼むから」
「?」
「これ以上、何も言わないでくれ」
セレスティアは瞬いた。
「……なぜですか?」
「……心臓が、もたない」
「…………」
セレスティアは、ベイルが押さえている胸元へ視線を落とした。
それから、顔を上げる。
ベイルは、いつの間にか顔を背けていた。
よく見ると、ベイルのその耳が、赤く染まっていた。
セレスティアは、もう一度ベイルの目を見た。
胸はまだ、どきどきしている。
けれど。
今度は、その鼓動から逃げようとは思わなかった。
「私……」
一度、言葉が止まる。
胸の奥が、大きく跳ねた。
それでも。
今度は逃げない。
ベイルを見たまま。
「ベイルのことが……」
先ほど気づいたばかりの、その気持ちを。
今度は、自分の意思で口にする。
「好きです」
「…………」
ほんの一瞬。
ベイルから返事がなかった。
ただ、セレスティアを見つめている。
「ベイル……?」
名を呼ばれて。
鋼色の瞳が、僅かに揺れた。
それでも、すぐには言葉が返ってこない。
「…………」
やがて。
「……俺も」
低い声が返ってきた。
「……えっ?」
今度は、セレスティアが瞬いた。
ベイルはまっすぐにその瞳を見つめる。
「俺も、セレスティアのことが……」
「好きだ」
「…………」
どくん。
また。
胸が、大きく鳴る。
けれど。
もう。不思議には思わなかった。
胸元へ手を当てる。
その奥では、まだ鼓動が速く鳴り続けている。
昨日までは、知らなかった。
今日になって、ようやく知った。
好きな人に見つめられると。
胸が高鳴ること。
好きな人と踊ると。
いつもとは違ってしまうこと。
そして。
好きな人から「好き」と言われることが。
こんなにも――。
「……嬉しい」
ふわり、と。
セレスティアの顔に笑みが広がった。
嬉しい。
ただ、それだけの。
何の飾り気もない、まっすぐな笑顔だった。
その瞬間。
再び。
ベイルの表情が、止まった。
「…………」
鋼色の瞳が、セレスティアを見つめたまま動かない。
まるで。
目の前の笑顔から、目を逸らすことさえ忘れてしまったように。
「ベイル?」
呼びかけると。
ようやく我に返ったように、ベイルが瞬いた。
「……いや」
なぜか、視線を逸らされる。
「どうかしましたか?」
「……何でもない」
「?」
明らかに、何でもないようには見えない。
セレスティアは、そんなベイルをじっと見つめた。
何だろう。
黙り込んで。
視線を逸らして。
「…………」
ふと。
少し前までの自分を思い出した。
ベイルの顔をまともに見ることすらできなかった、自分を。
セレスティは、僅かに目を見開いた。
「……ベイルも、どきどきしているのですか?」
「………」
返事がない。
けれど。
今のセレスティアには、もう分かる。
「……しているんですね」
「…………」
つい先ほどまで。
自分だけに起きている、おかしなことだと思っていたのに。
ベイルも同じなのだ。
そう思うと、なんだか嬉しくなった。
「ふふっ」
セレスティアは楽しそうに笑った。
「おあいこですね」
「…………」
するとベイルは、片手で自分の胸元を押さえた。
「セレス」
「はい?」
「……頼むから」
「?」
「これ以上、何も言わないでくれ」
セレスティアは瞬いた。
「……なぜですか?」
「……心臓が、もたない」
「…………」
セレスティアは、ベイルが押さえている胸元へ視線を落とした。
それから、顔を上げる。
ベイルは、いつの間にか顔を背けていた。
よく見ると、ベイルのその耳が、赤く染まっていた。