溺愛、しないで


私が座っていた椅子に涼しげに足を組んで腰掛けながら、学生証を眺めている彼。


目の前が真っ暗になるような絶望が視界を染め上げる。


男の足元には自分の鞄の中身が散らばっていた。


「……なんで……鍵……さっき、かけ……」


「ああそれ?外側からも鍵かけられるようになってるんスよ。気付いてたから逃げないんだと思ってたんスけど」


学生証を床に捨て、男が一歩一歩近付いてくる。


「どーこいくんスかあ?いーちーはーちゃん」


愉(たの)しげに目を細めた男に肩を掴まれた瞬間──ぶつりと音を立て、視界がブラックアウトした。

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