溺愛、しないで
俺達はバーに到着し、地下へと続く階段を降りていった。
重厚な扉を開けて中に入ると、俺に気付いた店長が走り寄ってきて頭を深く下げる。
「青島さん、お久しぶりです。お忙しいでしょうに、わざわざご足労いただいて申し訳ありません」
「別に構わねえよ。で……賭け金踏み倒した馬鹿はまだVIPにいんの?」
店長が本当に申し訳なさそうに首肯する。
それを見た銭次が店長に人払いをするように手でサインを飛ばし、VIPルームへの扉を開ける。
久しぶりというよりかは、“初めて”の仕事と言った方がいいかもしれないのに、俺の胸中は不自然な喜悦に満ちていた。
俺の中にあるのは、これから絞めあげる相手の悲鳴への期待。
自分へ向けられるだろう憎しみの感情を捻り潰せることへの愉悦。
VIPの一室へと向かう革靴の音がカウントダウンになっていることに、誰も気付かなかった。