溺愛、しないで
「──ったく、十分もかからねえうちに払いやがって。あるなら最初から出せや、クソが」
「ず、ずびばぜ……」
磨かれた床に不自然に飛び散っている赤。
その持ち主だった男は、少しでも現実から逃れようとしているのか、頭を抱えて蹲っている。
俺はその上に全体重をかけて腰掛けながら煙草をくわえると、銭次がすぐに火をつけた。
銭次が連絡したのか、部屋に入ってきた店長が、その状態で平然と煙草を吸っている俺を見て吹き出して笑う。
「どうやら、あっという間に終わったみたいで。さすが、青島さんですね」
「ああ」
店長に笑い返しながら、煙草を男の顔の前にスッと動かし、ペン回しの要領で真っ赤に燃える先端を眼前に突きつけた。