独占愛は夜より深く。
南地区に入った瞬間、空気が変わった。

さっきまでいた場所よりもずっと静かで、ずっと冷たい。
古いビルが並ぶ通りは街灯も少なくて、影ばかりが濃い。
人の気配もほとんどないのに、見えない視線だけがどこかに潜んでいる気がした。

要のバイクがゆっくり止まる。
私は腕を離すのが惜しいと思ってしまってから、そんな自分に慌てた。

「降りられるか」

ヘルメット越しでもわかるくらい、要の声はやわらかかった。

「……うん」

地面に足をつけると、少しだけふらつく。
その瞬間、要の手がすぐに私の腰を支えた。

「危な」

短いひと言。
でもそのまま離れない手のせいで、胸がまた落ち着かなくなる。
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