独占愛は夜より深く。
「お兄ちゃんのことに、あなたの家が関わってるんだよ……? そんなの、知ったら……」

続きが言えない。
涙がにじんで、視界が歪む。

要は一歩近づこうとした。
でも私は反射的に後ずさる。

「来ないで」

そのひと言で、要の足が止まる。

ほんの少しだけ揺れた彼の目を見て、胸がまた痛くなる。
傷ついてほしいわけじゃない。
でも今は近くにいてほしくない。
なのに、本当は離れてほしくもない。

矛盾だらけで苦しい。

「紗菜」

呼ばれても、素直に顔を上げられない。

「俺は、おまえの兄貴を消した側じゃない」

「でも同じでしょう……!」

涙がこぼれた。

「要の家なんでしょ。要だって知ってたんでしょ。なのに、何も言わないで、あんなふうに……」

キスの熱がよみがえる。
抱きしめられた腕の強さ。
甘い声。
全部、本物だったはずなのに。
今は何ひとつ信じられなくなる。

「私に好きとか言って、守るとか言って……あれも全部、罪悪感だったの?」

要の表情が初めてはっきり歪んだ。

その顔を見て、胸が締めつけられる。
でも止まれない。

「かわいそうだったから?」

「違う」

即答だった。
低く、強く、迷いのない声。

「それだけは違う」

要のその声に、地下室の空気が震えた気がした。
恒一も碧も伊織も、誰も口を挟まない。
ただ静かに見守っている。

要はゆっくり息を吐いて、それから言った。

「最初は、確かに償いに近かった」

その正直さが、さらに胸を刺す。

「でも今は違う。おまえが泣くのも笑うのも、全部俺の中に残る。守りたいとか、離したくないとか、そんな綺麗な言葉じゃ足りないくらい、おまえしか見えない」

真っ直ぐすぎる告白。
こんな場面で聞きたくなかった。
でも、こんな場面だからこそ嘘じゃないとわかってしまう。

「……ずるい」

涙声でそうこぼすと、要の目が少しだけ揺れる。

「今そんなこと言われたら、嫌いになれないじゃん……」

それは本音だった。
憎みたい。
突き放したい。
兄のためにも、簡単に許しちゃいけない。
なのに要のことを好きになり始めていた気持ちまで、なかったことにはできない。
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