独占愛は夜より深く。
ぐちゃぐちゃで、自分が一番嫌になる。
「紗菜」
また一歩、要が近づく。
私は今度は下がらなかった。
下がれなかった。
「俺は月城の人間だ。消えない事実だし、たぶんおまえを傷つけ続ける」
静かな声。
でも一つひとつが重い。
「それでも、おまえの前でだけは嘘つかない」
要の手が、そっと私の頬に伸びる。
私は反射的にびくっとした。
でも振り払えなかった。
「あの夜、おまえに触れたのも、好きだと言ったのも、全部本当だ」
指先が涙をぬぐう。
やさしい。
こんなときでも、どうしてそんなにやさしいの。
「信じられないなら、今はそれでいい」
要の声が少しだけ掠れる。
「でも俺は、おまえの兄貴の真実を暴いて、月城の闇ごと終わらせる。そのために月影を作った」
「……月影を?」
初めて聞く話に、私は小さく顔を上げた。
要はうなずく。
「最初から壊すためだった。あの家も、あの金も、全部」
その言葉に、恒一が目を伏せる。
碧は笑わないまま壁に寄りかかり、伊織は静かに帳簿を抱えている。
みんな知っていたのだ。
月影がただのチームじゃないことを。
「俺は月城の人間のまま、月城を潰す」
そう言い切る要の姿は、ひどく孤独に見えた。
強くて、危なくて、でもずっと一人で抱えてきたのだとわかってしまう。
私は唇を噛んだ。
すぐには許せない。
信じ切ることもできない。
でも、完全に突き放すことももうできなかった。
「……勝手」
やっとそれだけ言うと、要がわずかに目を細める。
「知ってる」
「私のこと、守るとか言って……そんなのずるい」
「それも知ってる」
「最低」
「うん」
何を言っても否定しない。
それがまた苦しい。
私は震える指で、要の服の袖をほんの少しだけつかんだ。
自分でも驚いた。
拒みたいのに、離れたいのに、どうしてこんなことをしてしまうんだろう。
その小さな動きに、要の目が揺れる。
「……でも」
声がかすれる。
「全部終わるまで、ちゃんと隠さないで」
地下室が静まり返った。
「私だけ何も知らないまま守られるの、もう嫌」
要はしばらく何も言わなかった。
やがて、とても静かにうなずく。
「ああ」
その返事だけなのに、胸が少しだけ軽くなる。
完全に許したわけじゃない。
まだ痛い。
まだ苦しい。
でも私は、この闇の真ん中で、要の本気を見届けたいと思ってしまった。
そのときだった。
地下室の外で、乾いた警報音が鳴り響く。
伊織がすぐに顔を上げる。
「まずいです。この建物の警備が再起動しました」
恒一が舌打ちする。
「長居はできねえな」
碧も入口へ視線を向ける。
「しかも外、増えてるかも」
現実が一気に押し寄せる。
修羅場の余韻を残したまま、また夜が動き出す。
要は私の手を取った。
今度は強引じゃない。
確かめるみたいに、静かに。
「行くぞ」
私は小さくうなずいた。
まだ全部は許せない。
でも、この手を振りほどくこともできなかった。
「紗菜」
また一歩、要が近づく。
私は今度は下がらなかった。
下がれなかった。
「俺は月城の人間だ。消えない事実だし、たぶんおまえを傷つけ続ける」
静かな声。
でも一つひとつが重い。
「それでも、おまえの前でだけは嘘つかない」
要の手が、そっと私の頬に伸びる。
私は反射的にびくっとした。
でも振り払えなかった。
「あの夜、おまえに触れたのも、好きだと言ったのも、全部本当だ」
指先が涙をぬぐう。
やさしい。
こんなときでも、どうしてそんなにやさしいの。
「信じられないなら、今はそれでいい」
要の声が少しだけ掠れる。
「でも俺は、おまえの兄貴の真実を暴いて、月城の闇ごと終わらせる。そのために月影を作った」
「……月影を?」
初めて聞く話に、私は小さく顔を上げた。
要はうなずく。
「最初から壊すためだった。あの家も、あの金も、全部」
その言葉に、恒一が目を伏せる。
碧は笑わないまま壁に寄りかかり、伊織は静かに帳簿を抱えている。
みんな知っていたのだ。
月影がただのチームじゃないことを。
「俺は月城の人間のまま、月城を潰す」
そう言い切る要の姿は、ひどく孤独に見えた。
強くて、危なくて、でもずっと一人で抱えてきたのだとわかってしまう。
私は唇を噛んだ。
すぐには許せない。
信じ切ることもできない。
でも、完全に突き放すことももうできなかった。
「……勝手」
やっとそれだけ言うと、要がわずかに目を細める。
「知ってる」
「私のこと、守るとか言って……そんなのずるい」
「それも知ってる」
「最低」
「うん」
何を言っても否定しない。
それがまた苦しい。
私は震える指で、要の服の袖をほんの少しだけつかんだ。
自分でも驚いた。
拒みたいのに、離れたいのに、どうしてこんなことをしてしまうんだろう。
その小さな動きに、要の目が揺れる。
「……でも」
声がかすれる。
「全部終わるまで、ちゃんと隠さないで」
地下室が静まり返った。
「私だけ何も知らないまま守られるの、もう嫌」
要はしばらく何も言わなかった。
やがて、とても静かにうなずく。
「ああ」
その返事だけなのに、胸が少しだけ軽くなる。
完全に許したわけじゃない。
まだ痛い。
まだ苦しい。
でも私は、この闇の真ん中で、要の本気を見届けたいと思ってしまった。
そのときだった。
地下室の外で、乾いた警報音が鳴り響く。
伊織がすぐに顔を上げる。
「まずいです。この建物の警備が再起動しました」
恒一が舌打ちする。
「長居はできねえな」
碧も入口へ視線を向ける。
「しかも外、増えてるかも」
現実が一気に押し寄せる。
修羅場の余韻を残したまま、また夜が動き出す。
要は私の手を取った。
今度は強引じゃない。
確かめるみたいに、静かに。
「行くぞ」
私は小さくうなずいた。
まだ全部は許せない。
でも、この手を振りほどくこともできなかった。