独占愛は夜より深く。
映像が止まった部屋は、しんと静まり返っていた。

兄の姿。
月城蓮司。
そして、背後にいた見知らぬ影。

知りたいことはまだ山ほどあるのに、今はその全部が一度に胸へ落ちてきて、うまく息ができなかった。

「今日はここまでにしましょう」

伊織の落ち着いた声が、張りつめた空気を少しだけゆるめる。

「残りはこのデータを整理してからのほうがいいです」

恒一も珍しく強く反対しなかった。
碧も机の端に腰を預けたまま、静かにこちらを見ている。

たぶんみんな、私の顔色を見て気を遣ってくれている。
でもそのやさしささえ、今は少し苦しかった。

「紗菜」

要の声に顔を上げる。

「こっち」

短く呼ばれて、私は小さくうなずいた。
部屋の奥には、簡易的に仕切られた小さな休憩スペースがあった。
古いソファと、低いテーブルだけの狭い場所。
静かで、少しだけ薄暗い。

要は私をそこへ座らせると、自分も隣に腰を下ろした。
近い。
でも今は、その近さに少しだけ救われる。

しばらく何も言わないまま、沈黙だけが流れた。
要は無理に話させようとしない。
それがありがたくて、余計に泣きそうになる。

「……私、変だよね」

やっと絞り出した声は、思ったよりずっと弱かった。

「兄のこと知って苦しいのに、要がそばにいると安心する」

本当は言わないほうがよかったのかもしれない。
でも、もう隠せなかった。

要はすぐには答えなかった。
その代わり、そっと私の手を取る。

大きな手。
少し冷たいのに、触れたところからじんわり熱が広がる。

「変じゃない」

低い声が、静かに落ちる。

「俺がそうさせたいと思ってる」

その言い方がずるい。
責めたいのに、責めきれなくなる。

「ずっと、おまえの逃げ場になりたいと思ってた」

胸がぎゅっと締まる。
そんなことを言う顔が、あまりにもまっすぐで困る。

「でも要は……」

「月城の人間だ」

私の言葉を引き取るように、要が淡々と続ける。

「安心させる資格なんかないのも知ってる」

「そんな言い方……」

「事実だろ」

苦く笑うその横顔が、ひどく寂しく見えた。

私は少し迷ってから、そっと要の袖をつまんだ。
前はそれだけで精いっぱいだったのに、今はもう少し近づきたいと思ってしまう。
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