独占愛は夜より深く。
「ねえ」

「ん」

「要は、いつから私のこと……」

最後まで言い切る前に、要の目がわずかに細くなる。

「気になったのは最初に会った夜」

心臓が跳ねた。

「守らなきゃと思ったのも、その夜」

「それ、やっぱり罪悪感じゃん」

そう返すと、要は静かに首を振る。

「最初はそう呼べるのかもしれない」

そこで少しだけ間があく。

「でも、おまえが俺を見るたびに表情が変わるのも、強がってるくせに泣きそうなのも、触れたら赤くなるのも、全部知っていくうちに変わった」

その言葉が、胸にじわっと広がる。

「気づいたら、守るだけじゃ足りなくなってた」

「……」

「笑わせたいし、泣くなら俺の前がいいし、他のやつに触られるのは嫌だし、たぶん最初からかなり重かった」

思わず小さく笑ってしまう。

「自覚あるんだ」

「おまえ相手だと嫌でもわかる」

真顔で言うから、また顔が熱くなる。

要の指先が、そっと私の頬に触れた。
前よりずっとやわらかい。
確かめるみたいに、ゆっくりなぞる。

「紗菜」

名前を呼ばれるだけで、鼓動が速くなる。

「今すぐ返事がほしいわけじゃない」

低く、静かな声。

「でも覚えとけ。俺はもう、おまえを好きとかそんな軽さで見てない」

胸の奥がきゅっと鳴る。

「じゃあ、どんなふうに見てるの」

自分でも驚くくらい素直に聞けた。

要は少しだけ息を止めて、それから私の額にこつんと自分の額を寄せる。

「失いたくないって思ってる」

そのひと言が、何より重かった。

甘い言葉よりずっと深い。
飾っていないぶん、真っ直ぐ刺さる。

私は思わず要の服をきゅっとつかむ。
すると要の目が、ほんの少しだけやわらいだ。

「そんな顔するな」

「どんな顔」

「今すぐ抱きしめ直したくなる顔」

「……もうしてるくせに」

そう言うと、要が小さく笑う。
次の瞬間、本当にまた引き寄せられて、今度はさっきより深く腕の中に閉じ込められた。

「要……」

「少し黙って」

耳元に落ちる声が甘すぎる。

「今、おまえがかわいすぎて余裕ない」

そんなことを真面目に言うのは反則だ。
胸が苦しくて、でも離れたくない。

私は迷ってから、そっと要の背中に手を回した。
自分から抱き返すのは初めてかもしれない。

その瞬間、要の体がほんの少しだけ止まる。

「……それはだめだろ」

「え」

「期待する」

かすれた声に、心臓がまた大きく跳ねる。

顔を上げたら近すぎて、逃げる暇なんてなかった。
要の視線が唇に落ちて、また戻る。
その熱にくらくらする。

「キス、していい」

問いかけなのに、声はもう半分答えを知っているみたいだった。

私は小さくうなずく。
それだけで要の目がやわらかくほどけた。

触れるだけのやさしいキス。
でも二度目は少し長くて、三度目は離れるのが惜しいみたいに深かった。

息が揺れて、指先まで熱くなる。
さっきまで泣いていたのに、今は胸が甘く満たされていく。

唇が離れたあとも、要はすぐ近くで私を見つめていた。

「……好きだ」

今度ははっきりと言った。

逃げ道も、ごまかしもない声だった。

「どうしようもないくらい」

その告白に、胸の奥がじんと熱くなる。
返事はまだできない。
でも、うれしいと思ってしまった。

「紗菜」

「……なに」

「おまえが全部知ったあとでも、隣にいたいと思うようにする」

強引なのに、どこか不器用で。
でもそこが要らしくて、私は少しだけ笑った。

「それ、宣言みたい」

「宣言だ」

即答だった。
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