【短編】散った灯り
花火

目当てのりんご飴も買ってもらうと、焼きそばが入った袋に入れる。


「よし。じゃあ、解散」

「は!?」

「だって私、花火大会は大野先輩と見るって約束してたんだもん。今井くんとは見ないよ」


カキ氷の空になったゴミを捨てると、そのまま帰ろうとした朱里を奏は引き留めた。


「少しだけ、時間くれない?花火は見なくていいから!」


奏への返事をきっぱり断ろうとすると、『5分後に、花火の打ち上げが始まります』というアナウンスにかき消された。
少し考えると、当てつけとはいえ、いろいろと買ってもらったことへの詫びも込めて、奏のお願いを聞くことにした朱里。

今度は朱里が奏について歩く、置いて行かれそうになっていると、奏は足を止めた。


「袋の端、片方持つ…」


焼きそばとりんご飴の入った袋を指さすと、片方を朱里がもう片方を奏が持って歩く。
まるで、荷物を半分こにして歩く様は、どこか子どもっぽくて恥ずかしくなるが、大して仲良くもない相手と手を繋ぐのも…と朱里は、もどかしくなった。

しばらく歩いて着いた先は、祭りが行われている場所の隣の公園。
グラウンドのライトは付いており、まばらに人もいる。

奏は、ほんの少し奥の薄暗い場所まで行くと、近くのベンチに座ったかと思うと、すぐに肩からかけていたショルダーバッグから何かを取り出した。


「あ、西野は座ってて。少し準備するから」

「は?準備って何?」


座りながら聞いてみるが、準備に夢中になっている奏から返事はない。
少しして、足元に明かりが灯った。
見れば蠟燭が立てられており、奏を見ると、バッグから線香花火の袋を一つ取り出した。


「その…今日は先輩との約束とってごめん。けど、俺…西野がいつもサッカー部の応援来てるの知ってて…えっと…正直、気になってる」

「…き、急に言われても…!」


思ってもいない奏のストレートな言葉に、朱里は思わず顔を赤くする。
この場所が薄暗くて本当に良かったと、本気で思ってしまうほど、動揺が隠せない。


「今井君のことだって、き、今日知ったばかりだし!そんなこと…」

「西野の言うこともわかるよ。だから、勝負しよ」

「え?」



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