ラッセルの丘で
とはいえ、さすがに服を着たまま外で、しかも真っ暗とはいえ住宅街の路上で《《最後まで》》してあげることはできないから、どうしても中途半端なままになる。
「なんかそのまま帰らせるの、申し訳ない気分」
「いいよ、別に。あとで部屋で適当に抜いとくから」
え、今この人なんて言った?
とんでもないこと、言わなかった?
「……ねえ、憧くん、キャラ変わってない? そんなこと、あからさまに言うタイプだったんだ?」
「お前相手に、今さら隠してもしょうがないだろ? とんでもないのはお互い様だ」
こともなげに、そんなことまで言ってくる。
「あ、一応言っとくとさ、ちゃんとおかずは優依だから。嬉しい?」
「……喜んでいいの、それ?」
「なに、じゃあ、お前とこんなことしたあとで、別の女のこと考えて抜いてもいいのかよ?」
酔っぱらってるのかな、と訝しく思ってしまうほど、時おり憧くんはあけすけにこんな話をした。クラスメイトと一緒にいるときの涼やかな好青年ぶりがまるで嘘のようだ。
「オレ、もともとAVとかグラビアとかで抜けないタイプなの。実際にセックスした相手じゃないと、おかずになんない」
「ふーん。そういう報告、別にいらないけど」
「お前は? 一人の時、どうしてんの?」
薄笑いを向けられて、頭に来たから、べーっと舌を出してそっぽを向いてやった。
「しょっちゅう憧くんとこんなことしてるのに、一人になってまで何かする気になんて、なれないよ。私は、帰ったらちゃんと勉強してる」
「へー。真面目でいいな」
意外なことに、茶化すような雰囲気もなく、感心したように言われてちょっとだけ焦る。見れば、ふっ、となんだか嬉しそうに微笑んでいた。
「優依のそういうとこ、嫌いじゃないよ、オレ」
「なにそれ」
「ただのやばい女じゃないから、いいな、ってこと」
偉そうに、なによ、とムカつきかけていたら、唐突に引き寄せられる。ぎゅっと抱きしめられたと思ったら、右の耳朶を甘噛みしてくる。
「……明日さ、クレインが友達のとこ泊まりに行くらしくて、留守なんだ。ケイティーも夜勤だから夕食済んだら朝までいない。そろそろ旅行の予定も組んどきたいし、学校終わった後、うち来ない?」
「行く。ただ、ケイティーにちゃんとあいさつしたい。こそこそするのは嫌」
両腕が緩んで、憧くんが私を見下ろしてくる。目がすっと優し気に細くなっていた。ああ、こうして見るとちゃんとカッコいいんだよね、憧くん。
「わかった。じゃあ、明日、優依を夕飯に招いていいか、ケイティーに訊いとくよ。前みたいに」
「ん。デザートはどこかで調達して持ってくわ。あと、夕食作るの手伝いますから、って言っといて」
それまでも何度か憧くんのステイ先には遊びに行っていて、ホストマザーのケイティーとも顔見知りだ。看護師をしていて忙しいから、夕飯づくりの手伝いを申し出るとすごく感謝されて「助かるからいつでもいらっしゃい」なんて熱烈に言われて面食らったくらいだ。
自慢ではないが、料理は結構得意だ。Potluck partyなんかでも、ステイ先のキッチンを借りてちらし寿司やカレーなんかを作って持っていって、わりと好評を博したりしている。他の留学生と仲良くなる手段にもなっているから、結構重宝する特技だったりする。
「お前が料理が得意、ってのも意外だったけどな」
「なにそれ」
「いや……ある意味見た目どおりか。ま、中身を知ってるオレとしては、やっぱ意外かな」
謎の優越感に浸っているようにも思える妙な雰囲気でそんなことを言って、ちゅっ、と小さくキスをすると、憧くんは「じゃ、また明日」と手を振って帰っていった。
「なんかそのまま帰らせるの、申し訳ない気分」
「いいよ、別に。あとで部屋で適当に抜いとくから」
え、今この人なんて言った?
とんでもないこと、言わなかった?
「……ねえ、憧くん、キャラ変わってない? そんなこと、あからさまに言うタイプだったんだ?」
「お前相手に、今さら隠してもしょうがないだろ? とんでもないのはお互い様だ」
こともなげに、そんなことまで言ってくる。
「あ、一応言っとくとさ、ちゃんとおかずは優依だから。嬉しい?」
「……喜んでいいの、それ?」
「なに、じゃあ、お前とこんなことしたあとで、別の女のこと考えて抜いてもいいのかよ?」
酔っぱらってるのかな、と訝しく思ってしまうほど、時おり憧くんはあけすけにこんな話をした。クラスメイトと一緒にいるときの涼やかな好青年ぶりがまるで嘘のようだ。
「オレ、もともとAVとかグラビアとかで抜けないタイプなの。実際にセックスした相手じゃないと、おかずになんない」
「ふーん。そういう報告、別にいらないけど」
「お前は? 一人の時、どうしてんの?」
薄笑いを向けられて、頭に来たから、べーっと舌を出してそっぽを向いてやった。
「しょっちゅう憧くんとこんなことしてるのに、一人になってまで何かする気になんて、なれないよ。私は、帰ったらちゃんと勉強してる」
「へー。真面目でいいな」
意外なことに、茶化すような雰囲気もなく、感心したように言われてちょっとだけ焦る。見れば、ふっ、となんだか嬉しそうに微笑んでいた。
「優依のそういうとこ、嫌いじゃないよ、オレ」
「なにそれ」
「ただのやばい女じゃないから、いいな、ってこと」
偉そうに、なによ、とムカつきかけていたら、唐突に引き寄せられる。ぎゅっと抱きしめられたと思ったら、右の耳朶を甘噛みしてくる。
「……明日さ、クレインが友達のとこ泊まりに行くらしくて、留守なんだ。ケイティーも夜勤だから夕食済んだら朝までいない。そろそろ旅行の予定も組んどきたいし、学校終わった後、うち来ない?」
「行く。ただ、ケイティーにちゃんとあいさつしたい。こそこそするのは嫌」
両腕が緩んで、憧くんが私を見下ろしてくる。目がすっと優し気に細くなっていた。ああ、こうして見るとちゃんとカッコいいんだよね、憧くん。
「わかった。じゃあ、明日、優依を夕飯に招いていいか、ケイティーに訊いとくよ。前みたいに」
「ん。デザートはどこかで調達して持ってくわ。あと、夕食作るの手伝いますから、って言っといて」
それまでも何度か憧くんのステイ先には遊びに行っていて、ホストマザーのケイティーとも顔見知りだ。看護師をしていて忙しいから、夕飯づくりの手伝いを申し出るとすごく感謝されて「助かるからいつでもいらっしゃい」なんて熱烈に言われて面食らったくらいだ。
自慢ではないが、料理は結構得意だ。Potluck partyなんかでも、ステイ先のキッチンを借りてちらし寿司やカレーなんかを作って持っていって、わりと好評を博したりしている。他の留学生と仲良くなる手段にもなっているから、結構重宝する特技だったりする。
「お前が料理が得意、ってのも意外だったけどな」
「なにそれ」
「いや……ある意味見た目どおりか。ま、中身を知ってるオレとしては、やっぱ意外かな」
謎の優越感に浸っているようにも思える妙な雰囲気でそんなことを言って、ちゅっ、と小さくキスをすると、憧くんは「じゃ、また明日」と手を振って帰っていった。