ラッセルの丘で
憧くんのステイ先は、Winの家から10分足らずのところだ。バス停のところまで坂を下りずに、途中で右に曲がる。ちょっとごみごみした感じの雑多な通りを中ほどまで行くと、何棟かが連なったTerraced-house というスタイルの家が密集している。その左端がケイティーの家だ。
ケイティーに「お久しぶりです」とあいさつすると「憧と仲良くしてくれてありがとう」なんて、まるでほんとの母親みたいにウィンクされて思わず笑ってしまった。
憧くんは、といえば「オレが優依と仲良くしてやってるんだよ」なんて言い返していた。ホストファミリーと上手くいっているようで、何よりだ。
ケイティーと一緒にシェパーズパイと簡単なサラダを作って、3人でダイニングで楽しくいただいた。炒めて味付けした羊のひき肉の上にクリーミーなマッシュポテトを被せ、チーズをのせてオーブンで焼いたもので、評判のあまりよろしくないイギリス料理の中では断トツに美味しい。お腹いっぱい食べてから、さっき買ってきたチェリーパイを紅茶と一緒にデザートに食べた。
「We'll do the dishes, so you might want to get ready for work」
後片付けはしておくから、仕事に行く準備をしたらいいよ、とケイティ−を促した。
これから夜勤だという看護師のケイティーはいつも忙しそうだ。イギリスには多いとはいえ、シングルマザーはなかなか大変だ。
憧くんと二人でお皿やカップを洗い、布巾で拭いて戸棚にしまうところまで済ませたところで、身支度を整えたケイティーが下りてきた。
「Thank you for the dishes. Feel at home, Yui. Have a lovely, romantic night, you two」
なんて意味ありげに微笑んで、仕事へ出かけて行った。
「とりあえず、オレの部屋行くか」
「ん。オッケー」
さっきから気もそぞろだと思ってはいたけれど、二人きりになったとたん、憧くんはせっかちに私を二階へ促した。
「ねえ、ちゃんと旅行の話をしてからだよ?」
「あとでいいって」
「えー? あとにしたら絶対疲れて無理だと思う」
「疲れるの、お前だけだろ」
「誰が疲れさせてると思ってんのよ?」
聞くに堪えない痴話げんか風のやり取りをしながら階段を上がる。突き当りが憧くんの部屋だ。隣は息子のクレイン。食事の時にいなかったから、すでに友達の家に行っているはずだけれど、一応、ドアをノックしてちゃんと不在なのを確認してから、憧くんの部屋へ。
私の部屋よりひと回り小さいシングルベッドルームで、小さなチェストが二つと本棚、机と椅子があるだけの潔さだ。机の上にスケッチブックが置いてある。
ケイティーに「お久しぶりです」とあいさつすると「憧と仲良くしてくれてありがとう」なんて、まるでほんとの母親みたいにウィンクされて思わず笑ってしまった。
憧くんは、といえば「オレが優依と仲良くしてやってるんだよ」なんて言い返していた。ホストファミリーと上手くいっているようで、何よりだ。
ケイティーと一緒にシェパーズパイと簡単なサラダを作って、3人でダイニングで楽しくいただいた。炒めて味付けした羊のひき肉の上にクリーミーなマッシュポテトを被せ、チーズをのせてオーブンで焼いたもので、評判のあまりよろしくないイギリス料理の中では断トツに美味しい。お腹いっぱい食べてから、さっき買ってきたチェリーパイを紅茶と一緒にデザートに食べた。
「We'll do the dishes, so you might want to get ready for work」
後片付けはしておくから、仕事に行く準備をしたらいいよ、とケイティ−を促した。
これから夜勤だという看護師のケイティーはいつも忙しそうだ。イギリスには多いとはいえ、シングルマザーはなかなか大変だ。
憧くんと二人でお皿やカップを洗い、布巾で拭いて戸棚にしまうところまで済ませたところで、身支度を整えたケイティーが下りてきた。
「Thank you for the dishes. Feel at home, Yui. Have a lovely, romantic night, you two」
なんて意味ありげに微笑んで、仕事へ出かけて行った。
「とりあえず、オレの部屋行くか」
「ん。オッケー」
さっきから気もそぞろだと思ってはいたけれど、二人きりになったとたん、憧くんはせっかちに私を二階へ促した。
「ねえ、ちゃんと旅行の話をしてからだよ?」
「あとでいいって」
「えー? あとにしたら絶対疲れて無理だと思う」
「疲れるの、お前だけだろ」
「誰が疲れさせてると思ってんのよ?」
聞くに堪えない痴話げんか風のやり取りをしながら階段を上がる。突き当りが憧くんの部屋だ。隣は息子のクレイン。食事の時にいなかったから、すでに友達の家に行っているはずだけれど、一応、ドアをノックしてちゃんと不在なのを確認してから、憧くんの部屋へ。
私の部屋よりひと回り小さいシングルベッドルームで、小さなチェストが二つと本棚、机と椅子があるだけの潔さだ。机の上にスケッチブックが置いてある。