恋のメンテナンスは必要ですか?

 *


 フラフラになりながらタクシーを降り、マンションのエレベーターに乗った。
 どんどん熱も上がってきたのか頭が全く回らない。ぼーっとする。

 エレベーターが止まり、扉を開けた。
 歩いて扉の前まで行くと玄関の取手に触れる。
 回らない頭で動作もおかしくなった彩は(あ……鍵開けてない……)と気づいたのに意味もなく扉を引いてしまった。

 本来なら鍵がかかっていて開かないはずの玄関扉。
 今日は何故か鍵が閉まっておらず、開いた。

「え……?」

 朝閉めたはずなのに。
 開いている理由がわからず、恐る恐る静かに扉を開けた。
 
 玄関には見覚えのある靴と

 
 彩ではない女性靴が置かれていた。


 
 彩は息を呑んだ。
 嫌な予感に耳鳴りが響く。

 頭が痛い。


 ここまで見てしまったら引くこともできない。
 彩は激しく鼓動する心臓に耐えながら物音を立てないように中へ入った。

 ゆっくりと扉を閉めて、玄関で靴を脱ぐ。
 足音を消しながらリビングに近づくと、少し開いた扉の隙間から翔と女性の声が聞こえてきた。
 
「だから予定を調整して……」
「もう少し——ばいいでしょ」
「俺は——」

 回らない頭では何を話しているのかまではわからない。でも、リビングでは翔が女性と二人きりで話し合っていた。
 あまりの衝撃に何も思わなかった。
 ショックを受けて泣くことも怒ることもしない。
 
 目の前に起きている現実を呆然と見つめた。
 心の中で違うかもしれない、でも。と否定と肯定を繰り返す。
 少しして頬を一筋の涙が伝った。

「っ……」
 思わず漏れてしまった彩の吐息に翔は勘付き、扉の方に振り返る。
 
「彩……?」
「っ……!」

 翔に見つかった彩は逃げるように玄関へと走り出した。
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