恋のメンテナンスは必要ですか?
フロアに二部屋しか無いこの階は廊下なんてものはほとんどなくて。
エレベーターを呼び出すよりも翔のが早くて追いつかれてしまった。
「彩!待って!」
「いやっ!!」
翔は彩の手を掴む。彩は振り解こうとした。
ただでさえ頭が痛いのに、なんでもっと痛くしてくるのか。
他に女性がいるなら最初から自分のことなんて放って置いてくれればいいのに。
なんで優しく愛してるなんて言ったのか。
次々と頭の中で溢れ出す言葉にポロポロと我慢していた涙が流れる。
「彩、勘違いさせてごめん。あいつは……」
「勘違いって何?この前、歯科に来た時もあの女の人助手席に乗せてたよね?最近は仕事も忙しいって全然一緒に過ごせないし……」
こんなの重たい女みたいだ。言っておきながら心の中では自分に嫌悪感。
言いたくない、もう嫌だと思うのに。
言葉は止まらず口から溢れ出ていく。
「もうほかっといて……家も出ていきますから……さっきの女の人と幸せに……結局、私には恋愛なんて無理——」
「彩。」
さっきまで優しく話を聞いていた彼は射抜くように彩を見つめていた。
低い声が耳に落ちる。
「頼むから話を聞いて。」
「っ……いやだ、聞きたくない。聞いたらもう全部夢だったみたいになりそうで嫌……」
翔は泣きそうな彩を抱き上げ、玄関へ引き戻す。
玄関扉を閉めると彩を優しく抱きしめた。
「ごめん」
「っ……」
優しく謝罪を口にする翔、彩の心は絶望に落ちていた。
(やっぱり、あの女の人は翔さんの——)
涙がもっと溢れそうになる手前、翔は言った。
「……俺は彩だけだ。」
優しい声で切実に見つめてくる翔をキッと睨んで彩は怒った。
体調不良も背中を押して強い言葉が口から飛び出す。