恋のメンテナンスは必要ですか?
第三十九話 「勘違い」
「ごめんなさい……」
リビングのソファーに座り、彩は静かに謝る。
「いや、俺が紛らわしいことを……最初から説明しておけばよかったんだ」
「本当だよねぇ〜だーから私はこんな女装秘書、いつかトラブルを招くぞって言ったのにぃー」
「彰人、今は女口調やめろ。彩がこれ以上誤解したらどうするんだ」
翔の砕けた口調と怒った顔は新鮮だった。
彰人は翔の言葉に「ヘイヘーイ」と低い声で返すとどっかりソファーの角に腰掛ける。
この女性に見える男性は新島彰人さんという翔の実家の会社で働く男性らしく、縁あって翔の秘書をしているらしい。
「だから最初に言っただろ。彼女できたら言っとけよって」
「彼女ができると思ってなかったんだ……少し前までは作る気もなかった。彩、勘違いさせて本当にごめん」
深々と謝る翔に彩も申し訳なさそうに頭を下げる。
「私こそ話も聞かず、ごめんなさい。早とちりして……でも、なんで女装を?」
聞いても良い話なのか悩んだが、やっぱり聞いておかないと気になって仕方がなかった。
「それは」
「彩さんが現れるまでは俺が女よけとしても役立っていたからですよ」
翔が答えるよりも先に彰人が理由を話しだす。
「女よけ?」
「そう。こいつモテるでしょ。だけど女には興味がないし、構う余裕もない。でも女は擦り寄ってくる。大体はこいつ一人で片付けてくるけど、そうもいかない女が多くてねぇ」
彰人は羨ましいのか頬杖をつきながらジト目で翔を見つめていた。
見られている本人は心底嫌そうな顔をしていたけれど。
「で、そんな時に出会ったのが俺ってわけ!」
「??」
「こいつが女に絡まれて困ってたから声をかけてやったんだけど。こいつ、俺のことも女だと勘違いしてさ。」
「当たり前だろ。完璧に女として振る舞っていたお前を一目で男と気付けるわけがない」
「だからって助けてもらったのにあの態度はないだろ!」
「女に困ってたのに新たに女が現れたって困るに決まってるだろう!」
それはそうかも。と心の中で彩は翔に同意するが、彰人は納得がいかないのか食いつき気味に言い返す。