恋のメンテナンスは必要ですか?
 
「はぁ?!俺が男だってわかった瞬間、手のひらを返すようにスカウトしてきたくせに!」
「え、翔さんがスカウトしたんですか?」
 
「き……聞けば恋愛対象は女性で、ただ女装好きな男だというから……職歴と学歴もなかなか優秀だし、レストランの開業と会社の業務で忙しくなることも考えていたから秘書として申し分ないと思ったんだ。」

「女装すれば女よけにもなるしねぇ〜」
「そうだな。」

「毎朝女装するこっちの身にもなれよ。」
 
「そう言いながら必要ない時でも女装してるだろ!」

 二人の言い合いはコントのようで面白かった。
 思わず「ふふっ」と声が溢れる。

 そんな出会いもあるのだと感心していると翔は小声で「まぁ……父にはすぐ男だとバレたけれど」と付け足した。
 さすがの彰人も進の慧眼(けいがん)には敵わなかったらしい。

 
 色々聞いたが、女性だと思っていた人は翔の秘書で、しかも男だった。
 恋愛対象も女性で。
 ただ女装好きのイケメン。

 長い間悶々(もんもん)と考えていた不安が解消されて胸を撫で下ろす。

 
「そっかぁ……全部私の勘違い……」

 彩はソファーにぽすんっと倒れた。
 その姿に翔は「ごめんね」と頭を撫でる。

 触れると同時に彼は彩の熱さにやっと気づいた。

「彩、なんか熱くない?……彩?」

「すみません……もう限界……」

 
 ばたん、きゅう っと。

 
 この後、数日間高熱で寝込んだのはいうまでも無い。
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