恋のメンテナンスは必要ですか?
第四十話 「レストランの招待状」
勘違いをして一悶着あった日から数日が経った。
高熱で寝込み、とてもじゃないが仕事に行ける状態ではなく。
「ほんっとうにご迷惑をおかけしました……」
「大丈夫だって。彩ちゃんが有給使うこと自体珍しいんだから。」
「そーだぞ。治ってよかったなー」
急な発熱で仕事に穴をあけ、有給を消化してしまった彩は同僚たちに頭を下げる。
同僚たちは彩が持ってきた たい焼きを頬張りながら「気にしないで」と微笑んでくれる。
でも彩は迷惑をかけてしまったことに申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
「患者さんにも説明たくさんしてもらって……本当に」
「はい。それ以上はもういいから。彩ちゃんもたい焼き食べなさい」
「んぐっ」
三樹は彩の口にたい焼きを突っ込んだ。
謝罪を出しかけていた口はたい焼きに塞がれ、もごもごと何も言えなくなる。
先輩のちょっと強引な優しさに彩の眉は垂れ下がった。
「……ありがとうございます」
「うん。それでいいの。ごめんよりありがとうの方が嬉しいからね」
三樹は母のような温かい目で彩に微笑んだ。
実際、現役で母親をして、職場でも一番の先輩である三樹はスタッフたちにとって母のような存在。
彩も納得して席に座る。
スタッフルームは温かい雰囲気に包まれていた。
みんなが和やかに休憩を過ごす。
樹はそっと彩に近づき、耳元で聞いた。
「そういえば、神崎さんとは解決したのか?」
「あっ、うん。色々あったけどね」
「ふーん?……よかったじゃん」
「ありがとう樹」
樹はふっと笑って彩から離れた。そのまま同僚たちの会話に混ざり話す。
彩は今日の朝の会話を思い出して楽しみから自然と口角が上がった。
——『これ。この前のお詫びも兼ねて……彩のお父さんも退院されて落ち着いてきたみたいだし、せっかくだから久しぶりに家族水入らずで行っておいで』
朝、翔と二人で朝食を取っていると急に翔から封筒を手渡された。
封筒の中に入っていたのはレストランの招待状。
日にちが書かれており、両親の分と彩の分が入っていた。
『そんな、気にしなくてもよかったのに』
『ダメだよ。俺の気が回らなかったせいで彩を不安にさせたんだから』
翔は目尻を下げ、笑う。
『本当は二人で行こうかとも考えたけれど、せっかくだからご両親と行ったほうがいいと思ったんだ』
父は年末には退院したものの、互いに色々と忙しくまともに話せていなかった。
年明けに仕事が落ち着いてからもバタついていたし。
久しぶりの両親との食事に心が躍った。
『じゃあ……お言葉に甘えて』
『うん。俺からご両親にも連絡してあるから。楽しんでおいで』
翔の言葉に彩は微笑む。——
レストランの日付は来週の休みだ。
彩は残りのたい焼きを口に入れ、同僚たちの会話に混ざり休憩を過ごした。