恋のメンテナンスは必要ですか?

第四十二話 「指輪」


「え……?」

 戸惑い、無意識に考えてしまう。

 (どういうこと?)

「あちらの大聖堂でお待ちです。お気をつけてお入りください。」

 コンシェルジュはそれ以上何も言わなかった。

 大聖堂へと続く道には赤いカーペットが引かれている。
 歩く道を示すその赤い床をゆっくりと進んだ。
 
 大聖堂へと向かう階段を登り、扉が開く。


 アンティークグラスが輝く大聖堂。
 高い天井の開放感にバージンロードに彩られた花達の香りが鼻腔をくすぐる。
 
 ——バージンロードの奥。
 祭壇の前に立っていたのは108本のバラの花束を抱えた顔の整った男性。

「彩」

 愛おしそうに名前を呼ぶその人は、

 
「翔さん……?」


 今日は来られないと言っていた翔だった。
 
 
「来て。」
 翔に呼ばれ彩はゆっくりとバージンロードを進む。

 胸が高鳴り、身体中に鼓動が響く。
 祭壇前の階段に着くと、翔が手を差し出しエスコートしてくれた。

 階段を上がり、翔と同じ位置に立つ。

「……びっくりした?」
「なんで、翔さんが……これ」
「あはは、ベタだよね。108本のバラ。伝えるのにこれ以外思いつかなかったんだ。」
 

 翔は彩にバラを渡し、二回目の告白の時のように跪く。

 これから行われる会話を察して心臓がドキドキと鼓動した。

 
「彩と出会ってまだ数ヶ月。だけど、環境のおかげで密度の濃い時間を過ごしてきたと思う。」
 
「彩の笑顔、彩の泣き顔、疲れた顔、怒った顔。どんな彩も愛おしくて」
 
「『ずっと一緒にいたい。』心の底からそう思った。」

 翔は彩の手を握り、見つめながら話す。

 
「だけど彩は今まで傷ついてきただろう。この行動が正しいのか本当は不安だ。だけどもし、彩が俺と一緒にいたいと……信じてもいいと思ってくれてるのなら——」

 
 翔はポケットから小さな箱を取り出し、彩に捧げた。

 
「俺と結婚して欲しい。」
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