恋のメンテナンスは必要ですか?
 *


「んー!!!美味しい!何これ!」
 彩は店舗限定の釜飯を食べて感動。
 
「これが780円とは……どういう……」
 翔は信じられないもの見るように取り皿の中を見つめていた。
 客というより店舗調査に来た調査員のような感想にまた笑いが溢れてしまう。

(ふふ。変な人)

 パーティー会場で声をかけられた時は苦手だと思った。
 早くどこかに行ってくれと願っていたのに。

 洗礼された仕草と雰囲気、整った顔立ちから溢れる親しみやすさに心がくすぐられる。
 敬語だったのがプライベートだからとタメ口に変わったギャップも相まって。
 つい楽しくて、明日は仕事だというのにお酒も進んでしまう。

「翔さんって意外といい人なんですね」
 
 彩は口に酒を運びながら何気なく翔に言った。
 彼は言葉をいじるように「その言い方だといい人とは思っていなかったことになるけど?」と笑う。
 
「そうですね。顔が良い男ってろくな奴いないと思ってました。」
「……そう思うことになった経験が?」

「……まぁ色々と」
 彩は記憶を濁すようにさっきより多めに酒を喉へ流し込んだ。

「かっこいい人ってそれだけで目を引くじゃないですか。不意に優しくされただけで良い人だなんて思ってしまって。よく知りもしないのに 好き!って思ってしまう時代がきっと誰にでもあります」
「…………。」

 翔は真剣な表情で彩を見つめる。
 彩は苦く笑いながら言った。

「私にもそんな時があったってだけです。」
「……聞かせて?」

 翔の言葉に、二人は視線を合わせる。

 
「彩さんのこと、もっと知りたい。」


 真剣な眼差しに彩は瞬きを重ね、目線を下げながら昔話を始めた。
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