恋のメンテナンスは必要ですか?
 *


「一人暮らしを再開したのに結局うまく行かなくて……また実家に戻って。今は落ち着いて過ごせてます。」
「……」
 翔は黙って机を見つめていた。
 
(どうしよう……)
 
 重い空気にしてしまった罪悪感に焦る。
 居た堪れなくなって残っていたお酒を一気に喉に流し込んだ。

「あ……ごめん」
「いえ!こちらこそすみません」
 彩は場の空気を変えようとタンバリンを鳴らす。
 
「はい!」
「梅酒のソーダ割り下さい。翔さんは?」
「俺はまだあるからいいよ」
「かしこまりましたー!」

 箸を取ってご飯を口に運ぶ。
 白々しいと分かっていてもそれ以外の誤魔化しが思いつかなくて。
 
 彩は「ご飯、美味しいですね」と笑った。
 

 *


「ありがとうございましたー!」
「ましたー!!」

 居酒屋特有の挨拶で見送られ、店を出る。

 勢いで飲みすぎた彩の足はフラフラ。
 それでも意識を保とうと必死に前を向いた。

「彩さん、大丈夫?」
「……凄いですね翔さん。私より飲んでると思ったのに」
「俺、強いから」
「さすがソムリエ……うっ」
 
 彩は青い顔で口元を押さえて気持ち悪さを堪える。

「すみません。少しベンチか何かに座ってもいいですか……」
「もちろん。……ごめん、ちょっと触るよ」

 言葉へ返事を返す前に、翔は彩を抱き上げる。
 恥ずかしいと思いながらも気持ち悪さには勝てず、諦めて彼に体を預けた。
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