恋のメンテナンスは必要ですか?
紹介される女性たちは大体いいとこ育ちのお嬢様か、翔の顔と金に惹かれてきた贅沢で見た目ばかりを気にする女。
翔が車で連れてきた場所がチェーン店の大衆居酒屋だとわかると揃いも揃って離れていく。
それを都合のいい女よけとして使っていた。
娘を紹介しようとしていた男性が離れていき、父と二人きり。
翔より先に父が口を開いた。
「お前に用意した相手だがな、」
「本当にいるのか?」
「当たり前だろう。……私が直接見て決めた子だ、絶対気にいる。断言しよう」
「はぁ……俺は望んでないんだが」
父は人を見る目がある。
それはよくわかっている。
人に対してシビアな父が選んだ子と言われると少し好奇心が湧いてくるが半信半疑だった。
「それで?その子はどこにいるんだ?」
翔が諦め気味に聞くと進は視線を会場の端へと動かす。
「あそこで壁の花になっている子がいるだろう?」
父の目線の先を追いかけると会場の隅の壁で背中を預け、手持ちぶたさにワインを揺らしている女性がいた。
深いワインレッドの上品なパーティードレス。
ブラウンの髪が綺麗にまとめられ、アレンジされている。
凛とした空気に感じる知的な雰囲気に、大人っぽさの中に残る可愛らしい顔は翔の好みだった。
「…………へぇ。」
見た目は、好みだと思った。
でもそれは見た目だけの話。
このパーティーに来ているということは大体中身も変わらないだろう。
『父が選んだ』ということを知らなければ、そう思っていた。
「お前好みだろ?」
「…………」
息子の沈黙を父は肯定と受け取る。
進はニヤリと笑い、断言した。
「話してみろ。きっとお前は彼女に惚れるぞ。」
父の戯言を右から左に通し受け流すが、流しきれず少し胸に刺さる。
「あとで紹介してやろう。彼女はこの話を知らないからな。今時、親が婚約だのと囲ってやるものでもないだろう。彼女と付き合いたいなら自分で頑張れ。親にできることは縁を用意してやることだけだ。」
父は他の招待客への挨拶に戻るため、離れていく。
残された翔は一人、壁の花になっている彩を遠くから見つめていた。