恋のメンテナンスは必要ですか?
 *


 翌朝。

「うっ……」
 頭が割れるように痛かった。

 揺れる視界に頭を押さえながら体をベッドから起こす。
 周りを見回すとそこは自分の部屋だった。

「……私、どうやって帰ってきたんだっけ……?」

 途中から記憶がない。
 公園で帰ろうとして、翔さんが送ってくれるって……それで……。

「……………………どう、しよう?!」


 寝てしまった。

 昨日とは違う意味で青ざめる。
 いや、二日酔いなので同じ意味でも青ざめてはいるのだけれど。
 お詫びの連絡をするにも初対面、連絡先も知らなかった。

「……最悪だ……」

 彩は深くため息を繰り返すが今更。
 時計を見ると午前9時。
 今日は午前休なので歯科の出勤は14時から。

 ベッドから降り、シャワーに向かう。
 服も体もパーティーから帰ってきた状態で気持ち悪い。
 自分の部屋を出て一階に降りると母が「あら、おはよう」と迎えてくれた。

 
「昨日は飲み過ぎたみたいね。大丈夫?薬飲む?」
「欲しいかも……ねぇお母さん、昨日の……」
「ああ、翔くん?もー彼が彩をお姫様抱っこして現れた時は何があったのかと驚いたわよ」

 ガシャガシャと薬の入ったボックスを探りながら母は答えた。
 
 お姫様抱っこ。
 初対面で泥酔、お姫様抱っこをされたなんて恥ずかしくて目も当てられない。
 もういっそ、今後会わないことを祈ってしまう。

「羞恥心と罪悪感で吐きそう……」
「あら?いいじゃない。まだ二十四歳なんだから楽しめば?で、付き合うの?」
「何でそうなるの?!」
「逆に何でそうならないの?」
 
 母は不思議そうに彩を見つめる。
 彩は苦しげに目尻を下げた。

「恋愛は……また傷つくのも嫌だし」
 視線が自然と落ちる。
 胸の奥がギュッと締まって苦しくなった。

「……シャワー浴びるね」

 母の視線を通り過ぎ、浴室に向かう。
 シャワーの音が響く浴室で彩の表情が苦しげに曇っていた。
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