恋のメンテナンスは必要ですか?
 *


 院内から二階へと続く階段を登り、スタッフルーム。
 院長と話し込んでいたので既に同僚たちは帰宅していると思っていたが……。

「よう。お疲れ、なにかトラブルか?」
 
 みんなが帰った中、樹だけが私服に着替えた状態で彩を待っていた。

「樹?なんでまだいるの?」
「お前を待ってた以外にこの状況であり得るか?」
「?今日なんか約束してたっけ?」

 何か約束していただろうか?
 彩は頭の中のスケジュールを探るが何も思い出せない。

「ばーか」
「はっ!?」
「いいから早く着替えろ」

 樹の言葉にイラッとしながらも早く着替えたいのはこちらも一緒。
 眉間の皺を深くしながら自身のロッカーを開けようとすると指先にチクっと痛みが走る。

「いたっ」
「どうした?」

 小さな悲鳴に樹が駆け寄った。
 彩の指先からぷつりと血が出ている。
 
「切った……いや、刺さったのか?」
「うん……でも刺さるものなんて……」

 ロッカーの取手部分を覗いてみると、あるはずのないものがそこにはあった。

「画鋲?」
「おい……これは……」
「…………」

 樹の言おうとしてることがわかる。
 これは、たまたまじゃない。
 
 誰かが意図してここに……画鋲を入れた。

 彩の表情が曇る。
 思い当たることも、人もいる。
 でも安易に言葉にするものじゃないと思った。

 隣では樹が怖い顔でキレている。

「ありえないだろ……!こんな悪意のある嫌がらせ誰が!!」
「……大丈夫だよ」
「っ……大丈夫じゃねぇだろ!」
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