恋のメンテナンスは必要ですか?
 ——彩とは大学の授業で出会った。

 歯科衛生士の学科は女子ばかりでだるいと感じていた時、
 授業内でペアになったのが彩だった——。
 
『葉山です。よろしく?』

『星野。よろしく』
『患者やる?衛生士やる?』
『だるいから患者』
『何それ。まぁいいや。はい、チェア座ってー』

 
 俺は。
 自分の顔も、身長も、女子ウケがいいことをわかっていた。
 好意を持たれること自体に悪い気はしない。
 自己肯定感は上がるしそれによって得られる優越感は何より気分が良かった。

 けれど、優越感よりも周りの女たちが黒い感情をぶつけ合っていることが気になって。
 その原因が自分となっていることに嫌気がさして。

 最初は彩にも冷たい態度で接してた。

 
『……また星野と私?』
『らしい』
『まぁ。気楽でいいけど』
 
 なのに。
 彩はむしろそれが心地いいみたいに笑っていて。
 たまに優しくすると『何?気持ち悪い』と返されたくらいだ。

 何度か組むとそれなりに気も許していくもので、俺からの提案で連絡先を交換。
 休み時間に話をする仲になった。
 

 ——大学の休憩室。
 彩と樹は課題のレポートを仕上げていた。
 
 始まってから数分と経たずに、机に置かれた彩のスマホが何度も振動。
 止まったと思ったらまた通知を告げる。
 
『……すげぇ通知来てるけど、ゲームかなんかか?』
『あ……ごめん……彼氏……』
 彩はそう言ってスマホを鞄にしまう。
 しまった後も微かに振動音が聞こえ、まだ通知が続いていることがわかった。
 
『……連絡こまめすぎねぇ?怖いレベルだぞ』
『あはは……だよね……』

 そういって俯く彩の表情は暗く悩ましげで。
 ……どうにかしてやりたいと思った。
 
 けど、
 その後知った。
 今の彼氏は彩を前の彼氏から救った男だったことを。
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