恋のメンテナンスは必要ですか?
 *


 翔との電話から二十分は経った頃、彩の家のインターホンが鳴った。
 2階から下を覗くと元彼の恭平が玄関に立っている。

「っ……!!」
 声を漏らさないように悲鳴をあげた。
 どうしたら。
 居留守は通用するだろうか?
 
 何度も聞こえるチャイムの音に耳を塞いだ。
 自室の扉が開き体を震わせると扉の向こうに立っていた母が彩に言った。

「今お父さんが対応するって。彩は絶対外に出てきたらダメよ。」
「でも……」
「絶対、ダメよ。」
 
 強く言い残し母は扉を閉めた。

 窓の外から話し合っている父と恭平を見つめるが、彩は不安で仕方がなかった。
 恭平は力が強く、別れ話の時には思い通りにならないと力で彩を縛ろうとした。
 異常なほど彩に執着していた彼に話が通じるとは思えない。


「娘がいない?そんなわけないだろ!昨日俺はそこの窓から彩を見たんだ!!」

 
 外から怒鳴るような叫び声が聞こえる。
 彩の肩が恐怖に縮こまった。
 
 窓から見える恭平は今にも父に殴りかかりそうなほど興奮していて彩は恐怖に一階へ走り出す。

 (嫌だ!お父さんに何かあったら……嫌だ!)

 父に被害が及ぶ恐怖から玄関を出ようとするが、母は彩を強く掴み止めた。

「彩!!」
「だけど!お父さんが殴られたらどうするの!?」
「っ……」

 
 母と押し問答していると玄関がギィと音を立て静かに開く。
 
 
「やっぱり。いるじゃないか」
 
 静かな家内に響き渡る低い声。
 男は歪んだ執着心を露わにする。

 
「彩。探したよ?」
 
 ニタリと不気味に笑う恭平が、そこには立っていた。
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